Qさんの本を読むのが何よりスキ
という戸田敦也さんがQライブラリーのガイド役をつとめます

第93回
化け物社会は人間社会そのものです

邱さんの『西遊記』が吉川英治さんに愛読されたことは
前に書きましたが、毎号『中央公論』が出る度に
「面白い、面白い」と言って、この作品を真っ先に読んだ人に
経済学者だった中山伊知郎さんがいました。

この西遊記の2冊目の単行本の時にはその帯に
この中山伊知郎さんの推薦文が載せられました。
この『西遊記』は昭和53年に文庫本として再版されますが、
そのあとがきで邱さんは書いています。
「中山伊知郎先生も指摘しておられたが、
『西遊記の面白さは、
 一人一人(?)の妖怪が、
 それぞれものすごい力をもちながら、
 その力に皆限界があるところにある。
 天界に行って観音さまと直談判のできる孫悟空が、
 食うものに困ったり、
 僅か百里先にある河が予見できない
 といった矛盾が出てくる。
 妖怪と妖怪の関係また然りで、
 その限界のあるところから化け物の社会ながらに
 一つの道徳のようなものが出てくる』
という何とも痛快な物語なのである。
これは、とりもなおさず、人間社会そのものであり、
私が現代版『西遊記』の再現に情熱を燃やしたのも、
そうした化け物社会の人間臭さに魅いられたからである。
私が自分の西遊記を書いた時、
第1巻(1959年3月刊)の扉に書いた最初の文句は
『道という道は天竺に通ずれば、
  孫悟空よ、出鱈目に行け』であった。
そして、第8巻(1963年6月刊)の
『ああ世も末の巻』の最後の文句は
『観光で、坊主が食べる末世かな』
である。
今もその感想に変わりはない。」
(中公文庫版『西遊記(八)ああ世も末の巻』あとがき)


←前回記事へ

2002年11月28日(木)

次回記事へ→
過去記事へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ