第2回
読みやすいのが邱作品の特徴のひとつです。
邱さんの処女作品は「密入国者の手記」という小説です。
これを書いたのは1954年(昭和29年)。
小説「香港」で直木賞を受賞したのが1956(昭和31年)。
それから2002年の今日までの46、7年の間、邱さんが執筆し、
発表された著書はどのくいの数になるのでしょうか。
作品の数が多く、いつも途中で数えるのをやめてしまいます。
邱作品はこれまで3回にわたって全集が発行されています。
また全集に組み込まれなくても、単独で再版された本も結構あります。
また単行本の多くは、しばらくしてから文庫本として再登場します。
ですから、これらを全部あわせたら300冊は軽く超えているだろうな、
と思っていたら、今回、邱永漢アジア交流センターで調べた
著作一覧によると400冊を超えています。
でも作品の多さに圧倒されることはありません。
邱さんの本の特徴の一つはとっても読みやすいということです。
読みやすいということの中には、
面白く楽しく読めるという意味も入っています。
私はあるとき、『お金としあわせの組み合わせ』という本を買って、
東京から名古屋に向かう新幹線に乗りました。
東京と名古屋の間は2時間ばかりですが、
名古屋に着く頃には3分の2ほど読み進んでいました。
大阪まで乗っていたら、この本を読了していたでしょう。
事実、東京から大阪までの3時間程度の間に
邱さんの本を読み上げた経験が何度かあります。
邱さんの本を数冊読んだ人なら私の話に賛同くださるでしょう。
だから、邱さんの本を残らず読んでいるといっても、
ちっとも自慢にならないのです。
何しろスーと読めるのですから。
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