植物王国、動物王国の雲南は、同時に「少数民族王国」でもあります。長い年月にわたって、彼ら少数民族はそれぞれ独自の文化を発展させてきました。ここには、天文や暦法に優れたイー族、かつての南詔国を建てたバイ族、紅河の棚田を拓いたハーニー族、タイ人と親戚関係にあるタイ族、世界歴史遺産の麗江古城に暮らすナーシー族など、何十もの民族が暮らしています。ナーシー族は独自の象形文字「東巴」を使うことで世界中の研究者を魅了していますが、別の民族は近年まで文字を持たなかったことで有名です。私たちのコーヒー農園がある保山に暮らすデーアン族も、文字がなかった民族の一つです。彼らデーアン族は茶を好み、どの家にも茶の木があると言われるほどです。
また雲南には、自然と一体化した伝説の理想郷、香格里拉(シャングリ・ラ)伝説があります。香格里拉とは「心の月日」を意味するティベット語で、桃源郷の代名詞となっています。雲南省政府は、香格里拉のモデルは三江併流地域の迪慶(デチェン)ティベット自治州である、と宣言しています。このことからも、雲南は豊かな自然の中で多くの民族が共存する土地だ、という彼らの自負心を伺うことができます。
雲南の自然は多様であり、それぞれの農作物に適した場所がそれぞれの地域にあります。とりわけ有名なのはプーアル茶や生薬の栽培地域で、それぞれの主産地である思茅や麗江の山々には海外から買付けが入るほどです。1900年頃、このような山地に宣教師がコーヒーの原種を持ち込んだと言われています。雲南がコーヒーの生育にも適した環境でありながら、そこに暮らす人々にコーヒーを飲む習慣がなかったためか、今日まで品種改良を受けることがありませんでした。この自然の中に取り残されていた原種が、私たちの「宝の山」です。
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