この話にはまだ後日譚がある。それから二十何年たって、うちの長女がお嫁に行くことになった。娘が選びに選んだ相手が、どういうわけか日本料理屋の若旦那であった。披露宴がホテル・オークラでひらかれ、当日は新郎側のお客として、金田中、浜作、竹葉亭をはじめ、東京中の一流の料理屋の旦那衆が一堂に会した。料理は中華料理でも、日本料理でもなく、西洋料理であったのが、参列者にはなんとも不可解だったらしいが、私の方も花婿側に負けないくらい口のうるさいのがそろっていたから、コック長の小野正吉さんは肩の荷が重かったのではないかと思う。しかし、さすがに神経の行き届いた料理で、平安の間いっぱいのお客でも、スープは熱いのがいっせいに出てきたし、スモーク・サーモンも牛肉もとびっきりいい材料が使ってあった。席上、テーブル・スピーチも、川口松太郎、糸川英夫、安岡章太郎と面白いのがつづいたが、そのあとで、新郎側のゲストとして日本料理屋のご主人が立ちあがって、
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