(前回より続き)
人口降雨は1950年以降世界中で実施されています。
目的は、
「干ばつによる水不足」「エアコンの電力の軽減」
「大気中の砂塵除去」「森林火災のリスク減」
「北京オリンピックのようなイベント当日の好天を狙っての事前雨」
などです。
「雲の種」とよばれているヨウ化銀を
ロケットや飛行機で大気中に散布すると、
それを核にして雲が発生し、人工降雨が生じます。
ヨウ化銀は弱い毒性がありますが、
人工降雨に使われる量は微量で
人体に影響を与えるほどではないとされています。
しかしながら、人工降雨の実施回数は多く、
中国気象局は2008年、航空機による散布が1万8500回、
ロケット降雨が4万8000回、
1年間に全国計300万平方kmの地域で、
500億立方メートルの人口降雨を実施したと発表しました。
温暖化により、国境を越えて広がる砂漠化や、干ばつ、
中国ではその広大な国土や多様な民族、農村の貧困ゆえに
問題はひっ迫しています。
ロケット降雨は対処療法的な意味しかない上に、
少量であれ化学物質をまくことに対して、
先進国から有害だと批判されるのは避けられません。
CO2の削減など根本的な対応でないと
問題は解決に繋がりません。
しかし、農村の現場からみると、
この1滴の雨が恵みの雨で、
その日一日一日の日銭を得て生計を立てている生産者にとって
雨は命綱なのです。
生産者の人工降雨政策への期待は高まるばかりです。
世界で急速に大国にのし上がりつつある中国が、
国の内側からも外側からも、
力づくで自国を守らなくてはいけない難しい現実を
垣間見た気がしました。
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