そのパン屋さんの名前は、
LeBranc(ルブラン)と言いました。
バンコクのスクンビット39という住所にあります。
9月に入り、シンガポール行く用事もあり、
途中でバンコクに立ち寄ることにしました。
もう今度は、突進アタックです。
事前に約束した時間はその日の午後でしたが、
待ちきれずに午前に一度店を訪れました。
パンが食べたかった。
店は混んでいました。
迷惑にならない様に簡単な挨拶だけを交わして
カプチーノとパンオショコラ、
デニッシュ、サンドイッチ。
またしても頼み過ぎてしまいました。
こんなに食べられないという量のパンを完食して
午前は店を立ち去り、約束の午後を待ちました。
実を言うと、自分がどうしたいのかが
はっきりわかっていたわけではありません。
美味しいパンに出会い、
何とか自分の街でもそれを出せればと夢をもった。
けど、自分の職人は一人しか残してないし、
残った設備でどれぐらいのことができるのかもよくわかってない。
自分の無知を恨みました。
きっと、この自分の状態が
今の状態を招いているのだろう、
と自分を責める気持ちが自然と湧いて来ました。
けど、今回は変わっていける。
そのキッカケとして今回の出会いにかけたい。
そんな気持ちでしょうか。
午後、LeBrancの門をくぐると、
そこにはきっと、ご主人だろうと思われる、
帽子を深く被った男性が立っていました。
挨拶をする。なるべく笑顔で。
ご主人は軽く会釈してくれるけど、
まったく笑ってない。
「笑えない・・・ほんとに。」
だめなのかな?不安。
しばらくして奥さんと話を始めると、
僕は、正直に自分の気持ちを告白しました。
パンに惚れちゃったこと。
こんなに美味しいパンを
成都でも出したいと思っていること。
ご指導願いたいと思っていること。
しばらくすると、先ほどのコワモテのご主人が。。。
もう覚悟を決めてる僕はビビることもない。
同じ様に、丁寧に自分の気持ちを伝えた。
驚くべきことに、LeBrancさんは
今回の僕のオファーをどうやら面白がってくれている様だった。
コワモテのご主人は、
「いくらでもレシピつくってやるよ」
と乗り気だと言う。
「まったくそう言う風に見えないと思いますけど、
結構楽しんでいるんですよ。」
と奥さんがまた笑いながら言った。
照れ臭そうに笑うご主人の心が初めて伝わってきた。
僕は、その後すぐにでも成都に来てもらうことを約束し、
その場を去りました。
「これでいいよな。うん。」
自分が間違ってないことを確認するように、
口に出して道を歩き続けました。 |