自分の貧乏ばなしを書いているときに、昔のことを思い出しました。
当時3000円しかなかったと申し上げましたが、
実家暮らしでしたので、
ひとまず食べるものと眠るところはありましたが、
それだけでは困りますので、アルバイトをすることにしました。
思いついた場所は二箇所で、一箇所は「引越しのサカイ」で
もう一箇所は人材派遣の「パソナ」でした。
何か特別な理由があったからではありません。
お金がなくて働くとなるとなぜだか引越しを連想してしまって。
まあ、大学の体育会出身ですから体には自信がありましたが。
引越しのサカイに履歴書を持っていくと、
金子さんという人が私を迎えてくれました。
金子さんは不思議そう〜に私の履歴書を眺め、
いくつか質問をしました。
「あの、キムさん、大学院出てるの?」
「はい。」
「英語もしゃべれるの?」
「はい。」
「・・・。うちに大学院出身の人は来たことないんだけど、
なんでうちで働くの?」
まだ社会的にフリーターといった言葉がない状況でしたから、
どうにも納得のいかない様子でしたが、
まあ、私はお金に困っているわけで、
それで、引越しか思いつかなかった、
と正直に申し上げ、採用となりました。
ご存知の方もいらっしゃるかも知れませんが、
引越しの仕事はかなりキツイ仕事です。
また、わけありの方も多く、かなり荒っぽい職場でした。
最初についたのが、ベテランの加藤さんでした。
もう、時代錯誤も甚だしいパンチパーマに、
色つきメガネの最高に怖そうな人でした。
その人に、一日何十回も怒鳴られるし、
おまけに、加藤さんのアシスタントについていた、
職場では私の先輩にあたる18歳の金髪のお兄ちゃんには
えらくでかい顔をされて、
「おいキム、毛布もってこい。ロープもってこい。」
だのと、散々えばられたのでした。
最初はかなり抵抗があったこの仕事ですが、よく観察すると、
仕事の進め方、段取りは非常に高い合理性が求められ、
例えば、トラックに荷をつめていく作業などは、
・トラックの大きさ
・当日の朝、2〜3分で観察する引越し元の家の状況
・各荷の大きさ、形状
・通路の広さ等々
から、当日のスタッフに運び出す順序等を説明する姿を見て、
「いや、これは本当のプロの仕事だな。」
と尊敬の念を抱いたのでした。
こうなってくるとがぜん仕事は面白く、
半年ほどサカイさんではお世話になりました。
ちなみに、パソナさんから紹介してもらった仕事は、
たった一回でしたが、
一日中美人の・・・マネキンを運び続けるという仕事でした。
引越しのサカイで学んだプロ魂を発揮し、
熱心にマネキンを運んでいると、
そのパソナの事務所の一番偉い方に、
「いや〜、キムさんのマネキンの運び方は素晴らしい!」
と最高の賞賛をいただき、
喜んでいいのかどうか、複雑な心境でした。
何が言いたかったかというと、
どんな仕事にもやはり
プロ魂=プロフェッショナリズムというものがあるということです。
その仕事にやりがいを見つけられるかどうかは、
自分がその仕事の中に何を観察し、何を学び成長するか、
という心持だけです。
特に日本人のプロ魂は世界に誇るものがあり、
これこそが、「日本人にしかできないことをやれ。」
というテーマに通じるものだと思います。
ところで、その引越しのサカイの加藤さんには、
ずいぶんとつらい目にあわされたのですが、
最後には、とても可愛がってもらいました。
次回はこの経験から、
「上を目指すならまず最高の部下たれ」
という話をしたいと思います。
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