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67. 中国人にはわからない中国
前回までは日本人にはわからない中国市場の特徴を
いくつかの例を挙げて紹介しましたが、
逆に「中国人にはわからない中国」というのがあります。
最近私が特に感じて意識していることですが、結論から言うと、

「今、大多数の中国人には物の価値がわからない。」

こう書くと、親愛なる私の多くの中国の友人に
「何を〜!(怒)」と噛みつかれそうですが、
まあまあ落ち着いて先を読んでくださいな。

例えば私は焼肉屋として牛肉を売っていますが、
お客さんの中で牛肉の味がわかる人はほんの一握りです。
大多数のお客さんは牛肉の価値がわからないのです。
ですから、たまにうちの上等の肉をつかまえて、
「おい、お前んところの牛肉は白い脂肪だらけじゃないか。」
というようなクレームをいただくこともあるわけです。

これに似たような例はきりがありません。
ワインやコーヒーもそうです。
ワインを飲むとなると必ずでてくるのが
「フランスのワインはどれもうまい。」というフランスワイン信仰です。
信仰というよりそれしか知らない、というのが真実ですが
ちょっとかじった人だと、物知り顔で
「いや、フランスといえばボルドーでしょ。」となるわけです。
これだけで高い値段をつけても文句を言われないのです。

BMWに乗っている人も、BMWの車重が前後50:50に配分されていて、
そこから生み出される安定したドライバビィリティー、
コーナリングの際に体にフラットにかかってくる横Gの感覚
なんてわかる人はほとんどいないのです。

でもみんなBMWをやっぱり買うのです。
1000万円以上のお金を出して。

ここから言えることは、中国市場の価格づけは特に嗜好品になればなるほど
価格>>価値
となっています。
これが日本のように消費者がたくさんの知識を持っていたり、
激しい市場競争にさらされていると価格と価値がほぼイコールに近づいてきます。

この価格と価値の関係を理解すること、
そして価格設定について自分なりのポリシーを持つことはとても奥が深く、
また、経営者にとって最も重要な仕事のひとつです。

詳しくは、また別の機会にでも書きたいと思いますが、
私なりの価格設定のキーワードは、「市場を見る冷静な目」と「勇気」だと思っています。

さて、以上のことを踏まえて、
今中国で商売する上でもっとも大切なことはなにか?
と私に問われれば私は"ブランド"だと答えます。

先の牛肉の例でも、牛肉の価値がわからないからこそ、
きれいなメニュー、丁寧な説明、美しい盛り付け、よいサービス等を通じて、
価値あるものだという"感覚"を持ってもらうわけです。
これを一環して続けると、
「あそこの牛肉はいいものらしい」というメッセージが市場に浸透していきます。

だから、私は焼肉屋をやりながらいつも我々が顧客にどう見られているのかを気にし、
そのイメージに一貫性がるように配慮しています。

ところで、ブランドって何でしょうか。
次回は少し脱線して私のブランドに関する考え方を書きたいと思います。


2008年6月30日(月) <<前へ  次へ>>