トップページ > 成功の都「成都」からの便り > バックナンバー

   毎週月曜日更新
43. 仏像がわたしに語った言葉

その日、四川省にある有名な「峨眉山(がびさん)」の山中にいました。

私は3ヶ月に一度ぐらい、気分転換もかねてこの山に行っています。
私の住む成都からほんの2〜3時間の距離というのが非常に都合よく、
また、その山中にある「清閣寺」という寺の中にあるボロボロの部屋に泊まります。
そこでお茶を飲みながらまさに山水画のような風景をながめ、
滝の水の音を聞いていると時間の感覚が薄くなり、
心が洗われていく思いがするのです。

その日も、「報国寺」を起点に「清閣寺」に向けて歩きはじめました。
そして、最初の寺である「報国寺」の一番奥に、
今まで気がつかない場所があるのに気づきました。

中に入ると、1mぐらいの高さの仏像が数百体も置いてありました。
何をするところか戸惑っていると、
そばにいたお坊さんが
「あなたの年齢に合わせて仏像を数えて行きなさい。
その仏像にある番号が書いてあるはずです。その番号を私に伝えなさい。」
と私に小さな声で伝えました。

私は言われたとおりに、自分の年齢分だけ仏像を、
向かって手前の右側から1体ずつ丁寧に数えていきました。
最後の数を数え終え、上を見上げると確かに番号がありました。
それを覚えてさきほどのお坊さんに伝えると、黄色いカードを私に手渡しました。

その内容は、こんな感じでした。

「時に世の中に理解されず誹謗中傷を受けることもあるだろう。
しかし、いかなるときも心を静かに保つこと。
物事の本質を見極めることなくささいなことに気を荒だててはいけない。
人知れず壁の中で花を咲かせば、
その香りが(壁の外の)人々を魅了することだろう。」

経営を始めると、時に孤独感を感じることがあるものです。
いや、人と違った道を歩くとそれは孤独な道なのです。
時に近くにいる人間にもその生き方や、進む道を理解してもらえないことがあります。
でも、大切なのは何が「本当に正しいこと」なのかを見極めて進むことなのです。

私はこのことを心に刻むために、この内容を書におこし、
額にかざってオフィスの私の机の目の前に飾って毎朝じっと見つめています。

そして、この文章を書にあらためてくれたのは(上述の写真)、
邱先生が2005年ごろ訪れた四川省の貴陽という場所にあるレストランで、
先生にみそめられた陶祥能という男です。
彼は先生に声をかけられた後、
貴陽での生活を投げ捨て、単身成都にやってきたのです。
彼もまた、長い時間をかけながら一歩一歩山を登っている人間です。

こんなことを思いながらまた書を見ると、心が落ち着きをもってくるのを感じるのです。


2008年1月15日(火) <<前へ  次へ>>