いったん伸び始めた売上は、そのあとぐいぐいと伸びていきました。
すると、いろいろな変化が起き始めました。
ひとつは、激しかった従業員の流失が止まったことです。
気持ちは良くわかります。
暇で暇でしょうがない店なんて、いくら給料もらっても面白くもなんともない。
暇が一番苦痛ですから。
もうひとつの小さな変化は、
タクシーの運転手に対する知名度が飛躍的に伸びたことでした。
今でこそ成都のタクシーの運転手さんの大半は
「牛牛福」という名前を知っているはずですが、当時はまったくの無名でした。
当時の私の日課は、毎日店舗に行くときにタクシーに乗り
通じもしない「牛牛福までいってください。」ということでした。
相手が「は?それどこ?知らないよ。」というとすかさず、
「え?あんな有名な店しらないの?」とわざと驚いた顔を見せ、
「いやー、有名店だから知っといたほうがいいよ。」と場所を説明する毎日でした。
それがとある日、いつものように「牛牛福まで」というと、
無言で何の反応もない運転手がいたのです。
まあ、中国では返事をしない、まるで客を無視するような運転手も少なくないのですが、
気になって「ちょっと、場所わかってんの?」と確認しました。
すると、「シャオデ(四川語で"わかっている"の意味)」
というぶっきらぼうな言葉が返ってきたのでした。
商売がすこしづつ繁盛するとこういった小さな変化を肌で感じるものです。
そうこうしているうちに、また邱先生が成都にやってくる時期になりました。
先生は2〜3ヶ月に一度成都を訪れ、相談に乗ってくださったり、
ときに(いや本当はほぼ毎回ですが)重〜い課題を残しては飛びたっていかれるのです。
売上が向上しはじめたことを報告すると、先生はこう問われました。
「で今年はいくら儲かりそうなの?」
売上ばかりに気をとられ、利益のことをしばし忘れていた私は、
あらためて答辞2006年の年間利益を計算し、
「え〜、およそX万元の予想です。」と答えたところ、
一瞬カッと目を見開いた先生が体をほんの少し前に起こしながら
「それだけしかもうからないの!?」
と冷静な先生にしては珍しくちょっと強い語気でおっしゃったのでした。
お金儲けの神様に
「キミ、お金もうけぜんぜんなってないね。」
と警告を出された瞬間でした。
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