いよいよ先生のご自宅に到着して、
緊張の面持ちでインターホンを押しました。
どのように花束を渡したらよいかと考えていると、
中からお手伝いの方が現れました。
中でお待ち下さいと言われて、
広い玄関を抜けてこれまた広いリビングがありました。
そのリビングの真ん中に大きな花束というよりも
花壇があり、数多くの美しい花が飾られていました。
自分の持っていた花束がそれと比べるととても安っぽくて、
もう渡すのはやめて持って帰ろうと思っていた矢先に、
カジュアルにシャツを着こなした先生が笑顔で現れました。
もう仕方ないので先生に花束を渡すと
先生は笑顔で受け取ってくださり、
とても高級そうな花瓶に飾ってくださいました。
しかし明らかに花が花瓶に負けていたのは否めません。
そこに石河さんと西さんが現れました。
お二人とはこのときが初対面で、
緊張しましたが先生がお二人をご紹介してくださいました。
そして緊張の食事会が始まりました。
後で知ったことなのですが、
先生は食事の際にゲストの方を見ているそうです。
食事の席でのその人のマナーや気配りなど見て、
その方の印象や人となりがわかってしまうそうです。
そう考えると私の初めての食事でのマナーは
最悪であったといえました。
まず、はじめに食事の前に大事な事は席順です。
一般に主宰である先生を中心に、
左右に目上の方が囲んで座っていくのがルールですが、
私はとにかく近くに座ってみたいと思い、
石河さんも西さんもいるにもかかわらず
真っ先に先生の隣に座りました。
これはどう考えてもマナー違反です。
もちろん現在は一番隅に座っております。
また、先生はお酒をお客様の好みに合わせて飲まれます。
その日は自分を含め全員が
あまりお酒を飲まないメンバーでしたが、
先生に「君はお酒が飲めるの?」と聞かれた際に、
先生に勧められてそれを断るのは失礼かと思い、
「飲めます!」と大見得を切って答えました。
すると食前酒からはじまり、
シャンパン、
ワインと続々とお酒が注がれ、
全てを飲み干しました。
案の定、
緊張もありすっかり酔ってしまいました。
しかしこれもマナー違反で、
飲めないなら断るのが礼儀です。
もちろん今は乾杯のときにいただく程度にしております。
極め付きは、食事の際に出た料理につけるタレを、
緊張でランチョンマットに思い切りこぼしてしまい、
これをどうしたらよいかわからず身動きが取れない自分に、
隣から先生がおしぼりで拭いてくださったことです。
さらに一緒に食事をしていた奥様が
「後で洗うから大丈夫ですよ。」
とやさしく言ってくださいました。
先生と奥様にフォローしてもらっている自分が
とても情けなかったです。
以上のようなとんでもない食事作法で、
もう二度と呼ばれないだろうと思いながら帰宅しました。
しかし、このありがたいご縁は今も続いていて、
そのとき食事をした石河さんと西さんとは、
現在の旧天地に服装店とデザインオフィスを構え、
その服装店で私は働いております。
もしかしたら先生は今の状態を2年前から
想像していたのかもしれないと思うと、
不思議でならないし、本当にすごい方だと思います。
改めて先生が導いたこのご縁に感謝したいです。
(続く)
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