第1539回
同業他社という落とし穴
中国はずいぶん政府が取り締まりを厳しくしてはいますが、
いまだにコピー商品天国です。
そしてコピーされるのはモノだけではなく
サービスも同様です。
斬新なサービスを始めると、
必ず誰かが嗅ぎつけてマネをして、
本家よりも安い価格で提供するのです。
今日は5つ目の落とし穴、
同業他社という落とし穴についてはお話します。
弊社では以前、「VIP引越」というサービスを
中国人の方向けに販売したことがあります。
「VIP引越」とは梱包から荷解きまで
全てがパックになっている、
いわゆる日本の「引越らくらくパック」です。
中国の多くの人たちは引越をする際に、
今でも旧居での梱包と新居での荷解きは自分でやっています。
なぜなら、中国の引越会社は自分たちの仕事を
「A地点からB地点にモノを運ぶ運送業」と捉えていますので、
旧居から荷物を運び出して、新居に運び入れるところまでしか
やってくれないからです。
その代わり、中国の地元引越会社の
引越代金はべらぼうに安いです。
2トントラック1台分の引越荷物を運んでも、
数百元(数千円)の代金で済みます。
しかし、私は北京の郊外にどんどん建設され、
数百万元(数千万円)もするにも関わらず
完工を待たずに完売するマンションを見て、
「数百万元のマンションを買って、
そこへの引越だけ数百元ということはないだろう」と考え、
当社が海外引越で培った梱包や荷解きのノウハウを利用して、
数千元(数万円)と通常の引越の10倍もする
「VIP引越」サービスを開発したのです。
北京市民2000万人の中から、数千元の引越サービスに
喜んでおカネを払ってくれる人を探し出すためには、
大々的な広告宣伝活動が必要となります。
しかし、当社にはそんな資金力もなく、
最終的に最も低いコストで効率的な広告ができる
ネット広告を利用することにしました。
当社は「VIP引越」のホームページを作成し、
「北京搬家(べいじんばんじゃー、北京引越)」
というキーワードで検索した人が
このホームページに来てくれるよう、
リスティング広告やSEO対策を行いました。
しかし、その効果を試すために検索を繰り返していると、
他社で「VIP引越」を売りにする会社が
どんどん増えていることに気づきました。
きっと、当社のホームページを見て
「こりゃぁいいや」と思って、
すぐにマネしたのでしょう。
「VIP引越」はどうも時期が早すぎたらしく、
ほとんど成約することはできませんでしたが、
そんな不発のサービスに対しても
ものすごい勢いでマネをする
中国の人たちのバイタリティーには
ある意味感心しました。
中国に進出した日本企業も、
中国企業にマネされることを怖れて
商標登録に力を入れるところもあるようですが、
何をしてもマネされる、ということは
最初から計算に入れる必要がありそうです。
もし、どうしてもマネをされたくなかったら、
「サービス精神」、「完璧主義」、「生真面目さ」など、
中国の人たちにはマネのできない、
日本人の特長を生かしたモノやサービスを
提供するしかないのではないか、と私は思います。
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