第1527回
大ボラ吹きの末路
今年初め、浙江省温州市で会社を経営する林春平氏42歳は、
金融危機の影響で経営破たんした米国の老舗銀行
「アトランティック・バンク・オブ・アメリカ」を
6000万ドル(48億円)で買収したと
中国の複数のメディアを通じて発表しました。
このニュースを受けて、
中国政府の金融引き締め政策で債務危機が発生し、
会社経営者の夜逃げや自殺が相次いでいた温州では、
久しぶりの景気の良い話に大いに盛り上がりました。
そして林氏を地元の英雄として奉り上げ、
市の助言機関である政治協商会議の委員にも選出しました。
しかし、今年3月、中国国営の新華社通信が、
米国での取材を基に同名の銀行は存在しない、と報道すると、
林氏は反論するどころか、あっさりと自らのウソを認め、
記者会見を開いて謝罪をしました。
ありもしない銀行を買収したと、
それも複数のメディアを通じて発表するとは、
とんだ大ボラ吹きだ、と思っていたところ、
この林氏、先月とうとう逮捕されてしまいました。
容疑は偽造領収書を使って
巨額の輸出税還付金をだまし取った疑い。
同氏は2011年以降、傘下の貿易会社など
5社で偽造した増値税の専用領収書を使い、
1億元(12億5000万円)を超える輸出税の
不正還付を受けていました。
だまし取った金額が巨額であることと、
増値税専用領収書の偽造という
国家の徴税システムに
挑戦するような犯罪であることを考えると、
死刑は免れないのではないかと思われます。
中国にも日本にもいますよね、
こういう人...。
林氏が輸出税の不正還付を受け始めたのは
昨年からと言いますから、
今年初めに大ボラを吹いた時点では、
すでに犯罪に手を染めていたわけです。
そんな状態のところに、
新聞やテレビで報道されるような
ウソの国際買収の話をぶち上げれば、
痛い腹を探られるのは火を見るより明らかですので、
まさに自殺行為です。
おとなしくしていたら、もしかしたら、
輸出税の不正還付の件は
未だに明らかになっていなかったかもしれません。
しかし、それでもこういうタイプの人は
ホラを吹いてしまうんですな。
虚言癖、
いや、ここまで来ると単なる癖というよりは、
すでに病気です。
中国ではビジネスをするならカネを持っている人としたい、
という人が多いので、ホラ吹きが多くなる傾向があります。
言葉でのホラ吹きだけではなく、
空港に知り合いから借りたベンツで迎えに来たり、
非常に立派な友だちの会社の事務所に
1日だけ自分の会社の看板を掲げさせてもらって
取引先に見せたり、といった、
三流ドラマのようなことも実際に起こっているようです。
中国でビジネスをするときには、
あまり大きな話をするような人の話は、
「ハイハイ」と話半分か四分の一ぐらいに聞いておいて、
例え小さな会社でも
誠実な人が経営している会社とお付き合いをした方が、
最終的には、大怪我をするリスクを
減らすことになるのではないかと思います。
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