第1507回
ギャンブルとしての保険
海を拠点とする中国のLCC(格安航空会社)・春秋航空は、
先月からフライトの遅れや取り消しに対応した
航空遅延保険の販売を開始しました。
こうした保険を航空会社が直接販売するのは、
中国では初めてのケースなのだそうです。
この航空遅延保険は、1口20元(260円)。
天候や機器の故障などでフライトが遅延した場合、
3時間以上なら200元(2,600円)、
6時間以上なら400元(5,200円)、
フライトが取り消しになった場合は300元(3,900円)が
保険金として支払われるのだそうです。
購入者は発売開始から1週間で1万2000人。
1口20元ですから、24万元(312万円)の保険料収入です。
一方でフライトの遅延により保険金が支払われた人は、
発売から10日間で144人。
全員に最高額の400元が支払われたとしても
5万7600元(75万円)ですから、
粗利は差し引き18万元(234万円)、
粗利益率75%。
いい商売です。
そもそも飛行機に乗って出張する場合、
フライトが3時間遅れれば、
会議や商談には間に合わないわけですから、
200元の保険金をもらってもどうなるものでもありません。
それでも発売開始から1週間で
1万2000人もの人がこの保険を買ったということは、
多くの人がこの保険を新しいギャンブルの一種と
捉えているとしか思えません。
保険料は会社の経費で落として、
幸運にもフライトが遅延したら
保険金は自分のお小遣いにしてしまう、
という人もいるかもしれません。
中国の人たちはギャンブルが大好きです。
それは彩票(つぁいぴゃお)と呼ばれる
宝くじを買う人が多いことからもわかりますし、
公金を横領してマカオで全部すってしまう役人が
後を絶たないことからもわかります。
上海と深センの株式市場の株価が
香港と違う動きをすることがあるのも、
中国では株式市場が資本主義を支える資本調達の場、
などという立派なものではなく、
単なる公営の博打場と捉えられているためではないか、
と私は思っています。
そんなギャンブルの場に飢えている中国の人たちにとって、
未来に発生する事象によっておカネが払い戻される保険は、
新種の博打にしか見えないと思います。
飛行機が落ちて本人が死ぬと保険金が支払われる、
などという死亡保険はシャレになりませんが、
こうした遅延保険やホールインワン保険、天候保険など、
ギャンブル好きな中国の人たちの
射幸心を煽るような保険を次々と売り出せば、
保険会社が中国で業績を伸ばすのは
さほど難しいことではないのではないか、と思います。
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