第1495回
20元の中国製品と500元の日本製品

淘宝網には7日間無条件返品制度、
という制度があります。

これは商品を受け取った消費者が、
7日間以内であればどんな理由であろうとも
商品を返品しておカネを返してもらえるという制度です。
この制度があれば、
消費者は想像と違う商品が送られてきても
返品すれば済みますので、
ネット販売を安心して使うことができます。

この7日間無条件返品制度、
C to Cの淘宝網では各お店の意思に任されていますが、
B to Cの天猫では全てのお店に義務付けられています。
こうしたことからも、アリババグループがこの制度を
ネット販売の更なる普及の重要な条件であると
考えていることがわかります。

7日間の時間があれば、
消費者は送られてきた商品が不良品であるかどうかを
十分に判断できますが、
逆に言えば、7日間もてば、
あとは壊れてもよい、と言えないこともありません。
実際、淘宝網で買った商品の中には、
7日間とは言いませんが、
1カ月も使うとボロボロになってしまう
質の悪い商品もあります。

これはネット販売での競争が、
実店舗同士の競争よりずっと激しいため、
低価格で消費者にアピールし、
他社よりたくさん買ってもらうためには、
クレームや返品が出ないギリギリのところまで
品質を落としてコストを削減する必要が
あるためなのではないかと思います。

こうしたギリギリの競争の中で、
日本製品が戦っていくのは至難の業です。

ネット販売に限らず、
日本製品は今まで中国市場開拓に当たって、
自らのオーバースペックと高価格に悩まされてきました。

例えば、20元(260円)で1カ月使える中国製品と、
500元(6,500円)で5年はもつ日本製品。
冷静に使用1日当たりの単価を比較すれば
日本製品の方がはるかにお得なのですが、
今の多くの中国の消費者が買うのは20元の中国製品です。
もちろん、これは商品によっても違いますが、
多くの中国の消費者は未成熟で、
耐用年数よりも目先の価格の安さの方を
重視する人がまだまだ多いのです。

しかし、日本製品が中国製品と
同じ土俵まで下りていって戦う必要は全くないですし、
下りていって戦っても必ず負けます。

値段は高くても品質の良いモノを、
修理をしながら大切に長く使う、
というのは非常に良い習慣です。
特に、今後、世界の人口が増え続ける中で、
限られた資源を大切に使う、という観点からも、
必ず見直される考え方だと思います。

日本製品は中国製品と戦うために
使い捨てのような安い製品を大量生産するのではなく、
値段は高くても品質の良いモノを大切に使う、
という良い習慣を広め、
中国の消費者をより成熟した方向に導いていく
役割を果たすべきなのではないかと思います。





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2012年5月2日(水)

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