第1486回
外にも中にも敵がいる中国政府
先月、北京で開催された
全国人民代表大会(全人代)に合わせて
中国財務省がまとめた今年の中央・地方予算案報告によれば、
今年の中国の国防予算は6703億元(8兆7,000億円)に達し、
前年比11.2%増となりました。
これに対し日本政府は
「2011年に引き続き2ケタ台の伸びとなったことは
日本としても留意し、今後の動向を注視したい」
としました。
このニュースは日本でも大きく報道され、
中国の軍事的脅威が増すことを
心配された方も多いのではないでしょうか。
しかし、その一方、日本ではほとんど報道されていませんが、
国防予算を上回る金額を記録したのが、公共安全予算です。
公共安全予算とは、
国内の治安維持などに使われるおカネで、
今年の予算は7018億元(9兆1,000億円)と
国防予算よりも大きな金額が計上され、
伸び率でも前年比11.5%増と国防予算の伸び率を上回りました。
今年の中国は政権交代の年。
胡錦濤政権は安定重視政策を鮮明に打ち出しており、
チベットやウイグルの分離・独立、国内で多発する暴動やデモ、
反体制活動家の抗議活動などに対する引き締めを強化する予定で、
その活動に国防予算以上のおカネがかかるようです。
外にも中にも敵がいる中国政府。
しかし、外の敵と中の敵。
どちらがより怖いかと訊かれれば、
それはもちろん中の敵です。
特に、中国共産党の腐敗幹部に対する抗議運動や暴動に関しては、
どう考えても民衆の側に理があり、
へたに弾圧すると網民(わんみん、ネット市民)が主導する
反政府運動が全中国に広がりかねません。
昨年の広東省烏坎(うーかん)村の反乱の際にも、
当初、烏坎村の上部組織である陸豊市当局は
民衆によって組織された自治組織に弾圧を加えていました。
しかし、自治組織が弾圧に屈することなく戦い続け、
ネットと外国メディアを使った広報活動を続けた結果、
広東省の汪洋党委書記が自治組織のトップを
村の共産党組織のトップに就かせ、
村民委員会の選挙をやり直させることで事態を収拾しました。
これが、省のトップがバカで、
豊富な公共安全予算を頼みに弾圧を続けていたら、
本当に全国的な反政府運動に発展していたかもしれません。
自国の国民を傷つけるために使われる公共安全予算。
この国防予算を上回るおカネを、
抗議運動や暴動を押さえつけるためではなく、
腐敗幹部の摘発のための予算に回せば、
抗議運動や暴動も減り、次年度以降は、
この巨額のおカネをもっと有意義な活動に
使うことができるようになるのではないでしょうか。
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