第1481回
雇用を生み出すことは悪である!?
2008年、日本を震撼させた毒入りギョーザ事件。
このニュースでテレビに映された
問題の冷凍ギョーザのパッケージを見ると
「手作り餃子」、「手包みひとくち餃子」と
「手作り」、「手包み」であることが
「売り」としてアピールされていました。
当時の中国ではまだ人件費が安く、
大量の労働者に人海戦術でギョーザを手包みさせた方が、
ギョーザを包む機械を導入するより安上がりだったのですが、
既に人件費が上がるところまで上がってしまった日本では、
「手作り」、「手包み」に大きな価値を感じる人が多く、
ギョーザメーカーは中国でのコスト削減策を
逆に日本では付加価値として
「売り」にすることができたのでした。
しかし、その後、中国では人件費が毎年20%上昇、
労働者不足も深刻となり、
たった4年間で中国の製造業は人海戦術から
機械化・自動化に大きく舵を切らざるを得なくなりました。
今まで中国では、ミスをしたり、
悪意を持ったりする人間が作る「手作り」のモノより、
ミスがなく、悪意も持たない機械が作ったものの方が
安心・安全である、というのが常識でしたが、
今後は人件費の高騰により、
日本のように「手作り」がありがたがられる
世の中になっていくのかもしれません。
これだけ労働者不足が深刻になると、
今後、雇用についての常識も
覆されていくことが予想されます。
今世界では「雇用を生み出すことは善である」
というのが常識となっています。
特に以前の中国では、
国営企業の第一義は利益を出すことではなく、
雇用を生み出すことでした。
雇用を生み出して失業者を減らすことは、
社会を安定させるという意味で、
企業の社会に対する最も大きな貢献の1つだったのです。
しかし、今の中国の課題は、
労働力人口の減少と高齢化社会の到来を控えて、
より少ない人数でより大きな付加価値を
生み出す社会を作ることです。
そうした社会では、付加価値の低い産業に
ただでさえ足りない労働力を
大量に使用するのはよくないこととされ、
「雇用を生み出すことは悪である」
というのが常識になるでしょう。
私は自分の会社が70人の雇用を生み出していることを、
ひそかに誇りに思っていたのですが、
数年後には「柳田の会社はあんな付加価値の小さい事業に、
貴重な労働力を70人も使ってけしからん!」
と糾弾される日が来るのかもしれません。
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