第1466回
貧しい民主主義国家と豊かな独裁国家
貧しい民主主義国家と豊かな独裁国家。
みなさんはどちらの国に住みたいと思いますか?
貧しい民主主義国家は、
国民の投票によって選ばれた政治家が、
国民の民意に従って政治を行いますが、
国民が自分のポケットに
おカネを入れてくれる政治家ばかりを選ぶため、
国の財政は破綻寸前、国民もどんどん貧しくなっています。
一方の豊かな独裁国家は、
国民に政治的な権利はないですが、
独裁者が個々人の損得よりも
国益を優先した政治を行うため、
国の負債は少なく、国民も全体的に豊かになっています。
自由と豊かさのどちらを取るのか、という究極の選択ですが、
今の中国でこの質問をしたら、
ほとんどの人が迷わず後者を選ぶのではないかと思います。
中国の多くの人たちは、
中国共産党の一党独裁体制は大嫌いですが、
中国が民主化することによって
貧しい状態に逆戻りしてしまうぐらいなら、
政治的な権利など与えられなくても全く構わないのです。
中国では今までたくさんの人たちが民主化を試みてきました。
そしてそのためにたくさんの血も流されてきました。
しかし、1989年の天安門事件のときの学生たちも、
ノーベル賞を受賞した劉暁波氏を始めとする民主化勢力も、
「ネット民主主義」を推し進める
網民(わんみん、ネット市民)たちも、
「民主化」「民主化」と抽象的な理念や主張を繰り返すばかりで、
民主化を達成した後の民主主義国家・中国の
具体的な政治の運営の仕方やタイムスケジュールなどを
示しているのを見たことがありません。
そこに来て、昨年、
チュニジアの「ジャスミン革命」を発端に、
自由への熱狂の中で独裁者を追い出し、
勢いで民主化を達成してしまったアラブ諸国が、
1年を経た今でもまだ
混乱を続けているのを見せられてしまっては、
中国の国民が民主化に及び腰になるのも
わからないでもありません。
中国共産党を打倒して
民主化「革命」を起こす、という形ではなく、
国民が中国共産党にプレッシャーをかけて、
中国共産党自らの民主化「改革」を促すという穏健な形で、
豊かさを保ちながら民主化を達成する。
これが中国の多くの国民が望む、
民主化の形なのではないかと思います。
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