第1452回
終焉を迎える中国の高度経済成長
先日、中国政府のシンクタンク・
国務院発展研究センター金融研究所の巴曙松副所長は、
2012年は中国経済が軟着陸する年となり、
高度成長期から中成長期への転換期に入るであろう、
との見通しを語りました。
高度経済成長の定義はいろいろあると思いますが、
仮にGDP(国内総生産)が前年比で
10%前後伸びることを高度経済成長と言うとするならば、
中国はもうそうした状態に戻ることはなく、
今後はGDP成長率8%前後、
CPI(消費者物価指数)の上昇率は4%前後を
維持していくであろう、とのことです。
中国の経済成長率は2001年は8.3%でしたが、
2002年以降は9%から12%の間を維持、
昨年2011年も後半、インフレ退治のための
金融引き締め政策で景気が後退しましたが、
それでも通年では9.2%と9%台を確保しました。
しかし、2012年は多くのエコノミストたちが
8%台に落ち込むことを予想、
中国の経済成長率は10年ぶりに
9%を割り込むことになりそうです。
終焉を迎える中国の高度経済成長。
ただ、日本を抜いて世界第2位の経済大国となった中国が、
中成長期に入るのはある意味当たり前と言えるかもしれません。
なぜなら分母が大きくなった中国経済が、
いつまでも以前のように10%成長を
続けていけるわけがないからです。
実際、経済規模が小さかった10年前の10%成長と
現在の8%成長では、実額ベースでは
後者の方が4倍以上も大きいのです。
また、世界的な金融危機で揺れた2009年、
中国政府は失業者を増加させないために
経済成長率8%を死守するという
「保八(ばおぱー)」政策を展開しましたが、
今後は、中国の労働力人口の増加率はどんどん鈍化し、
2017年前後には減少に転じる見込みですので、
雇用創出のために高い経済成長率を
維持する必要もなくなります。
経済成長率8%、CPI上昇率4%。
この状態が続けられれば、
中国の国民はその差の4ポイント分、
毎年豊かになっていくことができますので、
今までのような爆発的に金持ちになる感覚は持てなくても、
将来に希望を持って暮らしていくことは
できるのではないでしょうか。
中国経済が高度経済成長期を終えて
安定的な中成長に落ち着くことは、
国内情勢の安定という観点から見ても、
悪いことではないのではないか、と思います。
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