第1375回
北京〜上海新幹線の途中駅はなぜ街から遠いのか?

中国共産党建党90周年に合わせて、
今月から営業運転が始まった北京〜上海新幹線。
最高速度300キロで1318キロ離れた北京〜上海間を
4時間50分で結びます。

所要時間は従来の在来線の半分以下になったとは言え、
北京〜上海間は30分おきに数本の便がある
飛行機で飛べば2時間と更に半分以下。
北京〜上海間の移動の主流は、
引き続き飛行機が担うのではないかと私は見ています。

一方で私は、今回の北京〜上海新幹線開通で便利になるのは、
途中駅の街に行く人なのではないかと思っていました。
当たり前のことですが、
飛行機は点と点を結ぶことしかできませんが、
新幹線なら途中下車ができます。
このため、飛行機で飛ぶには近いが、在来線で行くには遠い、
という中途半端な距離を移動する人にとっては、
今回の新幹線開通は大きな恩恵があると思ったのです。

しかし、実際はそうは問屋が卸しませんでした。
なぜなら、北京〜上海新幹線の多くの途中駅は、
街から非常に遠いところに作られているからです。

鳳凰網の報道によれば、
天津、安徽省定運、江蘇省蘇州などの途中駅は、
街の中心部から10-25キロも離れており、周りは一面の荒野、
そして更に悲しいことに街の中心部に行く
連絡路線がないのだそうです。
鳳凰網は「飛ぶような列車で2時間、
しかし、駅に降りてから街まで4時間ではがっかりだ」
と論評しています。

なぜこんな不便なところに駅を作ったのか?

それは、各地方政府が
新幹線の駅を郊外開発の起爆剤にしたい、
という思惑を持っているからなのだそうです。
街の中心部は黙っていても開発が進みますが、
郊外に新幹線の駅を誘致すれば、
そこを中心に新しい街ができます。
旅客の利便性よりも、地方の経済発展の方が重要、
というわけです。

しかし、北京〜上海間は飛行機の方がずっと速く、
途中駅も街から遠くて不便、ということになれば、
新幹線の利用客は伸び悩み、
利用客が少ないので、途中駅周辺の開発も進まない、
という悪循環に陥ってしまう可能性もあります。

各地方政府の思惑通り、
新幹線の駅の誘致が功を奏して郊外の開発が進むのか。
それとも、不便なために新幹線の利用客が伸び悩み、
途中駅周辺は荒野のまま放置されることになるのか。
今後の成り行きに注目です。


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2011年7月29日(金)

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