第1359回
本格化する中国政府のネット情報統制

先月から日本のウェブサイトが
開けないことが多くなってきました。

もちろん、中国では以前から
「チベット独立」、「東トルキスタン」、「法輪功」など、
中国の安定を脅かすようなキーワードを打ち込んで検索をすると、
表示がされず、暫くの時間、検索エンジン自体も使えなくなる、
というようなことはありました。

しかし今回は「チーズケーキの作り方」とか「AKB 48」とか、
中国の安定とは全く関係のない日本のサイトを見ようとしても
つながらない、という事態が起こっています。

これはどうも中国政府がネット上の情報管理強化に
乗り出したことによるものであると思われます。

今年チュニジアやエジプトで起こった革命において、
フェイスブックやツイッターなどの
ネットコミュニケーションツールが果たした影響が
非常に大きいことに危機感を抱いた中国政府は、
先月、情報統制を担当する中国国務院新聞弁公室の傘下に
国家インターネット情報弁公室を創設、
ネット上の情報統制を本格的に始めたのです。

現在、中国政府には、ネット上の情報を
毎日監視している職員が数万人いると言われています。

だだっ広い体育館のようなところで数万人が机を並べて、
1日中パソコンに向かって問題発言を探している様子を
想像するだけでもちょっとした戦慄を覚えます。
しかし、中国のネット利用人口は
今年3月末時点で4億7,700万人。
監視人員が5万人いたとしても、
1人当たり1万人も担当しなければなりません。

また、危険人物が
「打倒共産党(だーだおごんちゃんだん)」などと、
わかりやすい言葉で政府を批判してくれれば
検索もしやすいのですが、
そこは「上に政策あれば、下に対策あり」の国、
ネットスラングを駆使して
「達到工廠蛋(だーだおごんちゃんだん)」
などと書かれてしまえば、見つけるのは不可能です。

情報統制はイタチごっこです。
いくら表面に出てきたイタチを叩いても、
国民の心の中にある政権への不満という
イタチの発生源を解決しなくてはきりがありません。

中国共産党も網民(わんみん、ネット市民)も
「この国をより良くしたい」という最終目的は
同じであるはずです。
であるならば、
中国共産党は網民の意見にも真摯に耳を傾け、
良い意見は国の政策に反映させていく、
というネット民主主義国家の実現を、
自らが積極的に進めていくべきなのではないか
と私は思います。


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2011年6月22日(水)

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