第1343回
下がり始めた中国不動産価格

上海市の今年1-3月の住宅販売成約面積は、
前年同期比24.6%減少。
広州市の今年3月の新築住宅売買面積は、
前年同月比14.9%減と3年ぶりの低水準で、
平均売買価格も前月比8.2%の低下。
天津市で先月開かれた春季不動産取引会で
購入契約が結ばれた新築住宅の平均取引価格は、
前回の昨年秋季に比べて8.1%低下。

中国の今年3月末時点の不動産融資残高は増加したものの、
増加率は昨年12月末時点と比べて6.4ポイント下回り、
増加ペースの鈍化は鮮明。
中国銀行当局は北京、上海、深セン、
広州、重慶、杭州、南京の7都市を、
不動産価格下落高リスク地区に指定、
各銀行に対してこれらの地区の不動産価格が
最大50%下落した場合の不動産融資の
ストレステストを指示、などなど。

中国の不動産投資をめぐる
中国政府と不動産投資家によるチキンレース(度胸試し)は、
不動産投資家側が利害を同じくする
同志だと思っていた地方政府の寝返りにより、
中国政府の完全勝利が見えてきました。

また、不動産投資家の強気を支えていた、
「不動産価格が下落した場合、
中国の銀行が巨額の不良債権を抱え込む」という問題も、
実際は各銀行の融資全体に占める
住宅ローンの割合は10-20%、
不動産企業向け融資の割合は5-10%と
それほど大きくないことが明らかになり、
上記のように不動産価格が現在の半分まで暴落した場合の
ストレステストを指示するほどの余裕を見せています。

不動産価格が右肩上がりだったときには、
何しろ早く投資した人が大きな利益を得ることになるため、
不動産投資家たちは先を争って
マンションの部屋を奪い合っていましたが、
一旦、傾きが右肩下がりに転じれば、
今度は早く売った人の方が損失が小さくて済みますので、
今後、彼らは沈没船から逃げるネズミのように、
我先にと不動産マーケットから逃げ出すことが予想されます。

となると、不動産マーケットから引き上げられた資金は、
次の「お祭り会場」を探して中国中を徘徊し始め、
ただでさえ深刻なインフレ率を
更に押し上げてしまう可能性もあります。

こうした「ポスト不動産マネー」が国内を徘徊して、
インフレ率を押し上げるようなことがないよう、
いかに国庫に吸収していくのか。
これが不動産価格抑制に成功した中国政府が直面する、
次の課題なのではないかと私は思います。





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2011年5月16日(月)

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