第1342回
保守とリベラルの「大連立」

2012年の中国共産党大会で、
リベラルの共青団派から保守の太子党派への
政権交代が行われる、と言っても、
実際には中国政府の方針が
リベラルから保守にガラッと変わる、
ということにはならないと思われます。

なぜなら、国家主席には太子党派の
習近平(しーじんぴん)国家副主席が就任する予定ですが、
首相には共青団派の
李克強(りかーちゃん)副首相が昇格する見込みですし、
中国共産党の最高意思決定機関である
中央政治局常務委員会の9人のメンバーには、
太子党派の番頭格・「紅色キャンペーン」の
薄熙来(ぼーしーらい)重慶市党委書記と共に、
共青団派の番頭格・「GNH」の
汪洋(わんやん)広東省党委書記も
入ってくることが予想されるからです。

中国は中国共産党の一党独裁政権とは言っても、
保守からリベラルまで幅広い考え方を持った人たちが集まった、
言ってみれば「大連立」のような政権であり、
そうした幅広い考え方を持った人たちが
お互いに議論を尽くして政策を決めていく体制に
なりつつあるようです。

この方法ならば、政権が変わると
国の方針自体もガラッと変わってしまうアメリカや日本と違って、
国家の長期的な戦略を一貫性を持って進めていけますので、
先進諸国の政治体制よりもむしろ優れた部分も
あるのかもしれません。

私は1978年に改革開放政策を始めた時点で
ケ小平(どんしゃおぴん)氏は、
将来、中国共産党内に保守とリベラルの
両極端の考え方を持つ人たちが現れるのを
予測していたのではないかと思っています。

なぜなら、改革開放政策の思想の基盤となる
「先富論」は2つの段階に分かれており、
富める人から富んでいく第1段階では
保守の人たちが活躍しますが、
富める人が蓄積した富を貧乏な人に再分配する第2段階では
リベラルの人たちの働きが必要だからです。

実際には改革開放政策は
「何年で第1段階が終わったら、次は第2段階に入る」
というはっきりしたものではなくて、
第1段階と第2段階をバランスを見て、
平行してやっていかなくてはなりません。
そういった意味では、中国共産党政権が
保守とリベラルの「大連立」政権になるのは、
当然の成り行きだったのかもしれません。

保守とリベラルの「大連立」から将来的な民主化まで。
中国は1978年の時点で「総設計師」・ケ小平氏が描いた
未来の設計図に従って歩んでいるだけなのかもしれません。





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2011年5月13日(金)

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