第1340回
広東省で「GNH」導入

現在広東省は、
住民生活の質的向上を目指す方針の一環として、
住民の「幸福感」を評価する指数の導入を
検討しているのだそうです。

同省が公表した計画案によると、
指数は10分類の主要項目を基に算出。
指数全体に占める各項目の比率は
「就業、収入」が14%、「消費、住宅」が12%、
「社会保障」が12%などとなっているそうです。
こうした基準で算出された指数は、
単なる参考にするだけではなく、
政府の責任者や担当者の査定に
利用することが想定されている、とのことです。

この計画を進めているのは、
広東省のトップ・汪洋(わんやん)党委書記。
同氏は経済成長率を過度に重視する
これまでの姿勢を改める必要性を強調、
第12次5カ年計画(2011-2015年)の主要目標の1つとして
「幸福な広東の建設」を掲げています。

この住民の幸福感を評価する、という考え方は、
1972年に当時のブータン国王が提唱した
GNH (Gross National Happiness、国民総幸福量)が有名です。
国家はGNP (Gross National Product、国民総生産)で
示されるような金銭的、物質的豊かさを求めるのではなく、
国民の精神的な豊かさ、つまり幸福を目指すべきだ、
という考えから生まれたものだそうです。

私も国家の役割は国民の物質的な豊かさよりも、
精神的な豊かさを追求し、より多くの国民の
幸せを実現していくことだと思っていますので、
ブータン国王や汪洋氏の考え方には大賛成です。
もちろん、幸せになるためにはある程度の
物質的豊かさは必要だと思います。
しかし、今の中国では、幸せになるための
手段であったはずの物質的豊かさが、
そのまま目的そのものになってしまっているような
ところがありますので、
広東省の今回の試みはそうした拝金主義的な動きに
警鐘を鳴らす意味もあるのでしょう。

拝金主義からの揺り戻し、と言えば、
先日ご紹介した重慶市のトップ・
薄熙来(ぼーしーらい)党委書記が始めた
「紅色キャンペーン」が思い出されます。
この「紅色キャンペーン」も、
貧しかったけれども、みんなが平等で
収入が保証されていた毛主席時代に学ぼうという、
中国の人たちの「拝金疲れ」に訴えるキャンペーンです。

保守の太子党派である薄熙来氏は「紅色キャンペーン」、
リベラルの共青団派である汪洋氏は「GNH」。
どちらも「いかにも」という感じです。

両派閥の番頭格同士で
永遠のライバルと言われる2人。
しかし、目指す最終目的は同じなのですから、
2013年以降は無益な権力闘争などせず、
それぞれの特長を生かした方法で、
一緒に協力して中国を良い方向に
導いて行ってくれたら良いな、と思います。


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2011年5月9日(月)

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