| 第1303回北京のラストリゾート・門頭溝
 昨年末、北京で地下鉄5路線、全長108kmが同時に開業しました。
 開業したのは順義(しゅんいー)区に行く15号線、
 昌平(ちゃんぴん)区に行く昌平線、
 房山(ふぁんしゃん)区に行く房山線、
 大興(だーしん)区に行く大興線、
 通州(とんぢょう)区に行く亦庄線
 の5路線です。
 いずれも、北京の街と郊外の区を結ぶ路線です。
 これにより、北京の通勤圏は街から20-30kmに広がり、これらの郊外の区の不動産価格は今後、
 更に上昇することが予想されます。
 私が北京に住み始めた1996年、
 北京の朝を代表する光景は、
 通勤する人たちの自転車の大群でしたが、
 通勤圏が20-30kmまで広がってしまうと、
 さすがに自転車では通勤できません。
 北京は1時間から1時間半、電車に揺られて通勤する、
 東京と何ら変わりない街になりつつあるのです。
 これら5路線の開通で、北京の街から20-30km圏内で地下鉄が通っていないのは
 門頭溝(めんとうごう)区だけになってしまいました。
 門頭溝区は北京市の西のはずれに位置します。同区は良質の無煙炭を生産する炭鉱や、
 北京の街ができるずっと前に建てられた、
 1700年の歴史を誇る譚拓寺(たんぢゃーすー)という
 山寺がある田舎の町です。
 不動産価格を調べてみると、やはり地下鉄が通っていないせいか、
 他の郊外の区の地下鉄沿線地域と比べると
 まだまだ安い物件が残っているようです。
 門頭溝区は北京の街から20-30kmの通勤圏、
 という観点で見ると、
 北京のラストリゾートと言えるのかもしれません。
 しかし、そのラストリゾート・門頭溝区にも鉄道、それも正確には鉄道ではなく中国初となる
 中低速リニアモーターカーが敷設されるようです。
 この中低速リニアは門頭溝区石門営駅から石景山区リンゴ園駅までの全長10km強を走り、
 リンゴ園駅で北京のビジネスの中心地・
 CBD(Central Business District)にある国貿駅まで
 1本で行ける地下鉄1号線に接続する予定です。
 建設は先月から始まり、開通は2013年末の見込みです。
 私は門頭溝区で生産される無煙炭を日本に輸出する仕事をしていた関係から、
 1990年代後半に何度も同区に行ったことがあるのですが、
 こう言ったら失礼ですが、あんな郊外のド田舎の町が
 北京のベッドタウンになるとは夢にも思いませんでした。
 あれから15年。北京の街の急速な発展は、
 郊外の田舎町の位置付けさえも
 どんどん新しいものに塗り替えているのです。
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