第1242回
「日本製」と「日本企業製」の大きな違い

前回、日本で炊飯器を3つも4つも買って帰る
中国人観光客のお話をしましたが、
もちろん、中国でも日本のメーカーが作った
炊飯器は売られています。
しかし「中国で日本のメーカーが作った炊飯器が
爆発的に売れている」などという話は
ついぞ聞いたことがありません。

なぜか?

様々な理由があると思いますが、そのうちの1つは
「日本製の炊飯器と
日本企業が作った中国製の炊飯器では
価値が全く違うから」ということだと思います。

特にエラい人へのプレゼントの場合、
いくら日本のメーカーが作ったものでも
中国製の炊飯器を贈る人はいないと思います。
炊飯器に貼られている「日本製」、
「Made in Japan」というシールにこそ、
大きな価値があるのです。

これは他の製品でも同じです。
以前、私が淘宝網に出品する商品を
日本に買い出しに行ったときにも、
当社の担当社員から
「必ず、日本製の商品を仕入れてきてください。
いくら日本企業の製品でもベトナム製やタイ製、
ましてや中国製なんて絶対にダメですよ」
としつこく念を押されました。
中国では「日本企業製」ではなくて、
「日本製」の製品に絶大な人気があるのです。

中国の人たちはなぜ「日本製」にこだわるのか?

それは「外国企業は自国マーケットでは一級品を売り、
中国マーケットには二級品以下のものを売る」
という昔のトラウマをいまだに引きずっているため、
ではないかと思います。

今でこそ、世界で最も有望なマーケットとなった中国には、
世界中の企業が本国と同時、場合によっては本国よりも先に
最新鋭で最高品質のモデルを投入しますが、
以前は「本国で売れなくなった品質の悪い
古いモデルを中国に投入する」という
「一粒で二度おいしい方式」が普通に行われていました。

こうした「一粒で二度おいしい方式」で有名なのは、
フォルクスワーゲンの乗用車・サンタナですが、
日本企業が中国企業にライセンス供与をした乗用車でも、
冬になると隙間風が入ってきてものすごく寒い車があり、
「日本のメーカーも中国マーケットには二級品以下」
というイメージを中国の多くの人たちに与えてしまいました。

自動車の他にも牛丼やフライドチキンなど、
外国企業が中国での経営を
地元企業にまかせてしまったがために、
自国のそれとは似ても似つかない
モノやサービスを提供することになってしまい、
中国の人たちに「中国マーケットには二級品以下」という
誤ったメッセージを送り続けている外国企業もあります。

中国での経営を地元企業にまかせることは、
中国マーケットをよく知らない外国企業にとっては、
非常に便利なやり方であると思います。
しかし、自社のブランド、
延いては出身国のイメージも一緒に供与するからには、
自社や出身国のブランド価値を毀損させないような
厳しい監視の目も必要なのではないか、と思います。


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2010年9月24日(金)

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