第1232回
中国の「知らないうちに納税」方式

7月に日本で行われた参議院議員選挙で、
民主党大敗の1つの原因と言われているのが、
選挙直前に菅首相が言い出した消費税10%発言。

菅首相の発言をよくよく見直してみると、
「すぐに消費税を10%に上げる」
と言っているわけではなくて、
「消費税10%を一つの参考にして、
税制改革案のとりまとめをしたい」
と言っているだけなのですが、
日本国民の消費税率引き上げに対するアレルギーが
どれだけ強いかがよくわかります。

もちろん、増税するなら
行政のムダを全て排除してから、
という気持ちはよくわかります。
しかし、今後、少子高齢化が進む日本で、
安定的な福祉財源を確保するためには、
いつかは消費税率を引き上げなければならず、
日本国民もいつまでも
「消費税は上げてほしくないが、
福祉はしっかりやってほしい」などという
ダダっ子のようなことを言っていられません。

日本人の消費税アレルギーを
治す方法はないのでしょうか?

そこで一つの参考になると思われるのが、
中国の「知らないうちに納税してる方式」です。

中国の人たちの中で「自分は消費税を納税している」
という意識がある人はほとんどいないと思います。
なぜなら、スーパーで買い物をしても、
レストランで食事をしても、
お会計は額面通りの金額を払えばよく、
日本のように消費税が料金に
上乗せされることはないからです。

ただ、中国でビジネスをやっている方ならば
誰でも知っていますが、
中国には増値税(ざんじすぇい)という
付加価値税があります。
この増値税、B to B(企業対企業)の取り引きでは、
付加価値が増えた分に対して
17%の税金が課されるのですが、
B to C(企業対消費者)まで行き着いたとたんに、
税金の表示が消えてしまいます。

しかし、付加価値税は課税分の
最終消費者への転嫁が基本ですから、
結局、中国の消費者も税金の表示がなく、
納税している意識はないものの、
実は17%の増値税が商品の価格の中に織り込まれており、
「知らないうちに納税」しているのです。

これは13億人もいる消費者が
自分が買うモノやサービス全てに
17%もの増値税を課されていると知れば、
課税に反対する反政府運動が起こって
収拾がつかなくなってしまうかもしれませんし、
将来、国家財政がピンチに陥ったときに
税率を上げようとしても、
全国民のコンセンサスを得ることは
今の日本と同様、不可能と思われますので、
国民が知らないうちに自由に税率を上げられるように
こうした方法を採っているものと思われます。

日本国民も知らないうちに
税金を取られるのはイヤだと思います。
しかし、それで自分たちの将来の福祉財源が
いつの間にか確保されるのであれば、
中国の「知らないうちに納税」方式も
検討に値するのではないか、と私は思います。


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2010年9月1日(水)

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