第1224回
下がる販売価格、上がる賃貸価格

北京で不動産賃貸価格が上昇しています。

北京市の今年4-5月の不動産賃貸価格は、
前年同期比で約2割上昇しており、
交通の便が良いなどの立地条件によっては、
上げ幅が50%に達する物件もあるそうです。

いや、ちょっと待てよ。
中国では中国政府が4月に打ち出した不動産価格抑制政策で、
不動産価格が下落に転じているはずじゃないか。
それがどうして不動産賃貸価格がそんなに上がっているんだ。

そんな疑問が出てきても無理もありません。
普通、不動産販売価格が下がれば、
不動産賃貸価格も下がりそうなものです。
しかし、今の中国では、
販売価格と賃貸価格は反比例の関係にあるのです。

その理由はマイホームを買おうとしていた人たちが、
一気に賃貸マーケットに流れ込んだためであるようです。

不動産販売価格が値下がりに転じる
→潜在顧客はどこまで下がるか見極めようとする
→見極め期間は賃貸マンションに住む人が増える
→不動産賃貸価格が値上がりする

と、こんな仕組みになっているようです。

中国では不動産バブルの時代は、
投機家は家賃収入のインカムゲインなど眼中になく、
何しろ値上がり益のキャピタルゲイン狙いで
マンションを買っていました。
このため、不動産の実需はそれほど伸びていないため、
不動産賃貸価格はほぼ横ばいで推移してきた一方、
不動産販売価格はうなぎのぼりにどんどん上がっていく、
という異常な状態が続いてきました。

しかし、今回、中国政府の不動産価格抑制政策で
不動産販売価格が下げに転じると、
マンションを買う人が激減し、
多くの人たちが賃貸マーケットに流れ込み、
不動産賃貸価格を押し上げました。

今回の不動産販売価格と賃貸価格の反比例は、
ある意味、中国の不動産マーケットが
正常な状態に戻りつつある、
ということなのかもしれません。

今回の不動産価格抑制政策で、
中国の投機家たちは不動産価格が株式同様
下がることもある、ということを学びました。

今後、中国の不動産マーケットは、
投機家が集まる博打場、
という従来の異常な状態から脱却し、
自分で住むためのマイホームを買う人が買い、
投資目的の人たちも家賃収入のインカムゲインから
利回りを計算して投資を決定する、という、
より成熟したマーケットになっていくのではないか、
と私は思います。


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2010年8月13日(金)

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