第1189回
内陸部には誰が行く?

今、中国では内陸部に注目が集まっています。

昨年、金融危機による景気の減速に対して、
中国政府は巨額の財政出動や、
金融緩和などの対策を打ちましたが、
その多くは開発が遅れていた内陸部の開発計画を
前倒しするような形で投入されました。

このため、2009年の経済成長率は、
上海市8.2%、浙江省8.9%、広東省9.5%と、
沿海部が軒並み一ケタ成長に止まったのに対し、
内モンゴル自治区17.0%、重慶市14.9%、四川省14.5%と
内陸部は10%台の力強い成長を見せました。

そこで日本企業がにわかに注目をし始めたのが、
今まで中国企業の独擅場だった内陸部市場です。

先日、日本貿易振興機構(ジェトロ)がまとめた報告書でも、
重慶、西安(陝西省)、成都(四川省)、
武漢(湖北省)、長沙(湖南省)など
内陸部の主要都市の1人当たりの可処分所得は、
上海の2003-2005年ぐらいの水準まで高まっており、
今後、更なる消費拡大が期待できる、とされています。

問題は「じゃあ、誰が行くんだ?」ということです。

上海の2003-2005年ぐらいの生活水準、と言っても、
北京や上海などの沿海部と比べると、
内陸部の都市には日本語が通じるアパートメントや
日本料理店などの日本人インフラが圧倒的に少なく、
ただでさえ海外駐在を嫌がる人が増えている、
と言われている日本企業で、
そんなところに駐在をする社員を見つけるのは至難の業です。

そこで、日本企業各社は
北京や上海に既に数年間駐在して、
ある程度中国語も話せるようになり、
中国での生活に慣れた駐在員を内陸部に横滑りさせ、
比較的日本人インフラが整っている北京、上海などには
日本から中国語が話せない駐在員を持ってくる、
ということを考えているようです。

当社は日本企業の駐在員の引越の仕事を
させて頂いていますのでよくわかるのですが、
最近は、今まで日本企業が進出していなかったような
内陸部の都市に引っ越す日本人が増えています。
このため、北京の日本人駐在員の中には、
自分もいつ内陸部に送られるかわからない、
とビクビクしている人もいるようです。

ただ、私個人的には、
成長する内陸部市場を開拓する仕事は、
非常に楽しいのではないかと思います。
そんな話があれば、
私なら自分から手を挙げてでも行きます。
確かに北京、上海と比べれば生活は不便かもしれません。
しかし、少なくとも、景気の低迷が続く日本に返されて
後ろ向きな仕事をしたり、
リストラの対象になったりするよりは、
ずっと良いのではないでしょうか。


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2010年5月24日(月)

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