第1178回
共青団政権に欠ける「正統性」と「后台」

中国共産主義青年団(共青団、ごんちんとぅあん)は
中国共産党の中でも選りすぐられた
超エリートの集団です。

私はこの7年半、
共青団政権が打ち出す政策を注意深く見守ってきましたが、
どの政策も非常に合理的ですばらしいの一言に尽きます。
さすがは、若い頃から共青団で
専門の政治教育を受けてきたエリート集団です。
この辺も、松下政経塾出身の政策通が多い、
今の日本の民主党政権とイメージが重なるところがあります。

しかし、外側から見ていると共青団政権の欠点は、
「正統性」に欠けるところと、
「后台(ほうたい、後ろ盾)」がおらず、
人脈が乏しいことであるように感じます。

中国を治めるには、昔から
「劉備は劉邦の血を引いている」とか、
「中国共産党は抗日戦争に勝利して中国を救った」とか、
ウソかホントかは別にして、
そういった誰もが納得するような「正統性」が必要とされ、
それは今でも同じであるようです。

もちろん、胡錦濤総書記は
「中華人民共和国中興の祖である
ケ小平氏から総書記に指名された」という
立派な「正統性」があるのですが、
胡錦濤総書記を含め、多くの共青団出身者は、
その優秀な頭脳だけを頼りに出世してきましたので、
彼らの出自は「正統性」からは
ほど遠いものである場合が多いです。

また、同じ理由で、政権を後ろから
強力に支えてくれる「后台」がおらず、
人脈も共青団出身者ぐらいしかいませんので、
地方政府のたたき上げ地元幹部に
顔が利く人も限られてきます。

共青団政権はすばらしく優秀な
エリート集団ではありますが、
「正統性」と「后台」がないために、
共産党中央に対する求心力が高まらず、
せっかくのすばらしい政策が
十分に実行されない場面も出てきているのです。

この点、革命の英雄たちの子どもである
太子党(たいずだん)と呼ばれる人たちは、
「正統性」という点では申し分ないですし、
「お父様は私の命の恩人です」というような
今では党の長老になっているような人が全国におり、
「后台」となってくれます。

2012年の共産党大会では、
太子党の習近平氏が総書記に選ばれて、
それから10年間の太子党政権が始まることが
確実視されていますが、
共産党内部でそうした流れになっている背景には、
太子党の「正統性」と「后台」により
共産党中央に対する求心力が高まり、
中央政府の政策の実効力が高まることが期待されている、
ということもあるようです。

太子党政権になって、また昔の中国のような
人脈ドロドロの人治主義国家に
戻ってしまうのでは困りますが、
共青団政権のすばらしい政策を引き継いで、
更にそこに「正統性」と「后台」による
政策の実効性を加えてもらえれば、
中国の政治はますます良くなるのではないか、
と私は思います。


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2010年4月28日(水)

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