第1146回
中国でクレジットカードは普及するのか?

中国ではクレジットカードは絶対に普及しない。

私は中国に来てからずっとそう思っていました。
なぜなら、不払いが当たり前のこの国で、
貯金もない人に稼ぐより先に買い物ができてしまう
魔法のカードを渡してしまえば、
支払いを踏み倒す人が続出して、
ビジネスモデルとして成り立たないと思ったからです。

しかし、そんな私の予想は見事にはずれ、
今、中国でクレジットカードの発行枚数が
急増しているようです。

中国の中央銀行である中国人民銀行の発表によれば、
昨年6月末時点の中国での
クレジットカード累積発行枚数は1億6000万枚で、
前年同期比で32.9%増加したそうです。
一方、クレジット機能のないデビットカードの
累積発行枚数は昨年6月末時点で18億1000万枚に達し、
前年同期比で21.2%増加したそうです。
枚数ではデビットカードの方が
10倍以上の発行枚数を誇りますが、
増加率で見るとクレジットカードの方が
伸びが大きいようです。

しかし、予想通りというか、案の定というか、
クレジットカードの普及に従って、
支払いの延滞も多くなっているようです。

中国市場調査研究センターと国家統計局のデータによれば、
中国の昨年6月末時点でのクレジットカード発行枚数が
前年比33%の増加だったのに対し、
クレジットカードの支払い延滞額は前年比130%も増加し、
57億元(740億円)に達したのだそうです。

環球時報の記事によれば、北京で生活する27歳のある青年は、
過去2年間で7枚のクレジットカードを作り、
19万8000元(257万円)の延滞債務を作ったのだそうです。
彼はこのお金をすべて飲み食いや遊びに使ったと話していますが、
彼の家庭環境からすると返済には数年の年月がかかり、
彼の父親は「息子には失望させられた」と語っているそうです。

「多額の現金を持ち歩かなくてよい」という目的であれば、
デビットカードを持てばそれで十分なはず。
それをわざわざクレジット機能がある
クレジットカードを作るということは、
「自分が持っているお金よりたくさん買い物をします」
と宣言しているのに等しいわけですから、
延滞率が上がるのは当たり前の話です。

交通銀行太平洋クレジットカードセンターの担当者は
「違約率は現在の2%から激増することはないだろう」
と言っていますが、やはり私は、
中国ではクレジットカードのビジネスモデルは
早晩破綻するのではないか、と今でも思っています。


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2010年2月12日(金)

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