第1144回
政府と与党の権力の二重構造

良い意味でも悪い意味でも、
日本国内のみならず世界中から注目を浴び、
日本国首相兼民主党代表である鳩山首相を
はるかに凌ぐ存在感を見せつけている、
民主党の小沢幹事長。

先日、北京でタクシーに乗ったときに、
私が日本人だとわかった運転手さんから
「鳩山政権っていうのは、小沢一郎の傀儡政権なんだろ」
と言われてビックリしました。

タクシーの運転手さんは運転中にラジオを聴いていますので、
いろいろと情報通になるのはわかるのですが、
中国でもそういう感じで報道されているんですね。

日本ではこの状態は
「政府と与党の権力の二重構造」などと呼ばれて、
異常事態のように言われています。
しかし、中国の人たちと話していると、
中国では政府より中国共産党の方が
エラいのは当たり前ですので、
日本政府が民主党の顔色を伺いながら
政策を決定することについては、
あまり違和感はないようです。

中国の国家組織は上から下まで、
実務組織と党組織の二重構造になっています。

このため、国家機関や大規模な国有企業に行くと、
だいたい入り口の左右に
黒字と赤字の2枚の看板が掲げられています。
黒字で書いてある方が実務組織の看板、
赤字で書いてある方は党組織の看板です。

そして、国有企業の場合、通常、
その組織のナンバーワンは党組織のトップである
共産党委員会書記(党委書記)であり、
ナンバーツーが実務組織のトップである総経理となります。

以前、私はある国有企業を訪問して、
同社の総経理と会談をしていました。
そこに、冴えない風体の小男がフラフラと入って来ると、
総経理以下全員が立ち上がり、総経理が私に
「彼がわが社の「しゅーじー」です」と紹介しました。

当時、中国語は習い始めたばかりであまりわからず、
中国の国有企業の会社組織も理解していなかった私は
「なんでオレにわざわざ
司机(すーじー、運転手)を紹介するんだ。
それも全員起立で...」と不思議に思っていたのですが、
後からその冴えない小男は同社のナンバーワン、
総経理よりもエラい
「書記(しゅーじー)」であることが判明しました。
失礼なことを言わなくてよかったです。

中国で国家機関や国有企業とお付き合いをするときには、
こうした実務組織と党組織の二重構造をよく理解し、
誰が一番エラいのか、きちんと把握する必要がありそうです。


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2010年2月8日(月)

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