第1108回
8%成長のいびつな構造

先日、中国の今年7-9月の経済成長率が
8.9%だったことが発表されました。

金融危機による景気の後退で
今年1-3月は6.1%の成長に止まったのですが、
4-6月で7.9%、7-9月で8.9%と順調に回復したことにより、
1-9月トータルの成長率は7.7%となりました。
中国政府は年初から
「保八(ばおぱー、8%成長確保)」というスローガンを掲げて
今年通年の8%成長を死守しようとしていましたが、
その達成はほぼ確実となりました。

そして北京大学中国経済研究センターが、
内外のマクロ経済研究機関21機関の発表を基にまとめた
10-12月の経済成長率の平均は10.6%と
昨年4-6月期以来1年半ぶりとなる
2けた成長となることが予測されています。

ちなみに上記21機関の内、
最も高い成長率を予測したのはモルガンスタンレーで11.6%。
一方、1けた成長に止まると予測したのは
中国政府系シンクタンク・中国社会科学院と
HSBCだけでした。
外国系の研究機関が中国経済の
急速な回復を予測しているのに対して、
中国社会科学院が控えめな予測を出しているのを見ると、
どうも中国政府は既に景気の過熱を懸念し、
国民がバブルの再来に浮き足立つのを
戒めているように見えます。

「保八」の目標通り、
今年の8%成長が確実と見られる中国経済ですが、
その内容は決して健全とは言えません。

経済成長は大きく分けて
1.投資、2.消費、3.輸出の
3つの要素から成り立っていますが、
1-9月のそれぞれの伸び率は、
1.投資が前年同期比+33.3%、
2.消費が同+15.1%と堅調だったのに対して、
3.輸出は同−21.3%と大きな落ち込みを見せています。

一見、8%成長を確実にして順調そうに見える中国経済。
しかしその実態は、ボロボロに落ち込んで足を引っ張る輸出を、
4兆元(56兆円)の経済対策や金融緩和で
投資を増やすことによって力ずくでカバーする、
というかなりいびつな構造になっているのです。


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2009年11月16日(月)

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