第1107回
中国の日本料理と日本の中国料理

以前の北京には
まともな日本料理店がほとんどありませんでした。
日本料理店はたくさんあるのですが、
その多くは日本に行ったこともない中国人の板前さんが、
見よう見まねで作った日本料理ですので、
おいしいわけがありません。

このため、多くの中国の人たちは
「日本料理=まずい」という
誤った認識をしてしまっています。
日本人の私にとっては、何とも口惜しいことです。

しかし、最近は北京にも日本人や
日本企業が経営する日本料理店が増えてきました。
こうしたお店は、きちんとした
おいしい日本料理を出しますので、
日本人だけではなく、
どこからかうわさを聞き付けた
中国人のお客さんも殺到して大繁盛しています。

それはそれで大変喜ばしいことではあるのですが、
そうしたお店でも日本並みの
本当においしいものを食べようと思ったら、
寿司一貫 50元(700円)とか、
カルビ7切れ 280元(3,920円)など、
日本で食べるよりずっと高いおカネを
払わなければなりません。

寿司ネタを築地から空輸してきたり、
需要の少ない中国で脂の乗ったカルビを
入手したりするコストを考えれば、
こうした値段設定も無理もないような気がするのですが、
こんなことなら無理して中国で寿司や焼肉を食べなくても、
日本に帰ったときに思いっきり食べた方がよいのではないか、
とも思えてきます。

これは逆もまた真なりです。
日本の中華料理が中国料理だと思っていた私は、
中国に来て私が知らなかった安くておいしい中国料理が
たくさんあることに驚きました。

私は中国に来るまでは
北京ダックは高級料理だと思っていました。
しかし、北京では北京ダックの相場は1羽38元(532円)、
高級店でも1羽100-200元(1,400-2,800円)も出せば
十分においしい北京ダックが食べられます。

また、中国には魚を油で煮込んだ
「水煮魚(しゅえじゅゆぃー)」、
唐辛子の山の中から揚げた鶏肉を掘り出す
「辣子鶏(らーずじー)」など、
中国国内ではポピュラーですが、
日本ではまだあまり知られていない
おいしい料理もたくさんあります。

これは中国の日本料理同様、
日本の素材では本場の味は出ないし、
本場の味を出そうと思ったら、
材料を中国から取り寄せなければならないので、
コストがえらく高くなってしまう、
という理由もあるのかもしれません。

結論としては、当たり前のことですが、
安いておいしい料理を食べたかったら、
日本でも中国でも、
無理して外国の料理を食べようとはせず、
その国の料理を食べた方がよい、
ということになりそうです。


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2009年11月13日(金)

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