第1087回
中国にとっての北朝鮮

北京に住んでいると北朝鮮という国は
比較的身近な存在です。

私の家から歩いて5分のところには
北朝鮮焼肉店(韓国焼肉とは明確に違う)がありますし、
タクシーに20分ほど乗れば、
よくテレビのニュースで映される北朝鮮大使館と
その周辺の朝鮮街に行くことができます。
北朝鮮と国交のない日本から来た私にとっては、
この身近さは非常に新鮮でした。

私の家の近所の北朝鮮焼肉店・「平壌館」

北朝鮮がこんなに身近な存在である理由は、
中国と北朝鮮が共産主義つながりで
歴史的に友好関係にあるためなのですが、
最近は北朝鮮が中国の言うことを聞かずに、
核実験やミサイル発射などの
瀬戸際外交を繰り返しているため、
中国の北朝鮮に対する見方は
かなり冷めてきているようです。

しかし、中国にとって北朝鮮は
米軍を38度線で食い止めておく大切な緩衝地帯。
中国共産党内部では最近、
「そうした考え方にとらわれるべきではない」
という異論も出ているようですが、
やはりそれでも労働党独裁政権が崩壊し、
朝鮮半島情勢が不安定化することは避けたいところです。

そう言った意味では、中国にとっては
現状維持が最もありがたいことですので、
6カ国協議も議長国として主導すると見せかけて、
結局はダラダラと結論を引き延ばして
現状を維持しているのかと私は思っていました。

また、北朝鮮が暴れれば暴れるほど、
他国から北朝鮮に一番近い存在と思われている
中国の発言力、存在感は増しますので、
中国は問題を本気で解決しようとは思っていないのではないか、
というふうにも思っていました。

しかし、どうも中国も北朝鮮を6カ国協議に呼び戻して
問題を解決することを真剣に考えているようです。

先日、中国外交部主管の雑誌「世界知識」は、
6カ国協議には「新たな発想が必要だ」と
改革を提唱する論文を掲載しました。

論文は「6カ国協議は再開されれば喜ばしいが、
強制力がなく、利害をめぐる駆け引きが多い」と指摘、
現在の6カ国協議を
中国やロシアなど6カ国の地域協力組織である
上海協力機構(SCO)のような常設の枠組みに改組して、
安全保障や経済協力など分野ごとに
定期的且つ多面的な対話システムを
設けることを提案しています。

確かにこれなら
「核問題について他の5カ国が北朝鮮を説得する」という
従来の6カ国協議の構図ではなくなりますので、
北朝鮮も参加しやすいものになります。
「なにしろ北朝鮮を交渉の席につかせる」という点では、
結構良いアイデアなのではないでしょうか。

ともあれ、6カ国協議参加国は
それぞれの国の国内事情がありますので、
なかなか利害が一致しないかとは思いますが、
今回の中国外交部が出したようなアイデアを各国が出し合って、
ぜひ平和裏に解決を図って頂きたいものだと思います。


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2009年9月28日(月)

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