第1037回
最も賢い「ローリスク・ハイリターン」の行動とは

前回、燕莎橋で左折渋滞に遭った場合、
1番愚かな行動は公安局に行って
明らかにおかしい車線割りを改善して欲しい、
と請願に行くことです、というお話をしましたが、
2番目に愚かな行動は、
何も考えずに1車線しかない左折車線に並ぶことです。

これは法律的にも倫理的にも非常に正しい行動なのですが、
中国では割り込みをする人がたくさんいますので、
バカ正直に渋滞の最後尾に並んでしまうと、
いつまで経っても交差点にたどり着けません。
この行動はマトリックスの左下、
「ローリスク・ローリターン」に属します。

法律や倫理を重んじる日本人にとっては、
この方法が最も正しい行動であるのですが、
中国では下から2番目に愚かな
「ローリターン」な方法としか評価されないのです。

3番目に愚かな方法は、
大渋滞している左折車線には並ばず、
ガラ空きの直進車線から強引に左折してしまうことです。

この方法はもちろん法律違反ですし、
交差点に警察官がいればつかまって
違反キップを切られてしまいます。
しかし、警察官がいなければ
大渋滞の左折車線に並ぶよりも
ずっと早く左折することができます。
この行動はマトリックスの右上、
「ハイリスク・ハイリターン」に属します。

この行動は法律違反の上に倫理的にも問題がありますが、
「バレなきゃ何をしても良い」という
風潮が強い今の中国においては、
バカ正直に渋滞の最後尾に並ぶよりも
ずっと合理的な選択肢とみなされているのです。

そして1番賢い方法は、
信号の近くまでガラ空きの直進車線を進んで、
車線変更禁止区域になる直前に、
左折車線に無理矢理割り込むことです。
この方法は法律違反ではない上に、
渋滞を回避して早く左折することができます。
この行動はマトリックスの左上、
「ローリスク・ハイリターン」に属します。

この方法は法律違反でこそありませんが、
まじめに並んでいる人たちのことを全く考えていない、
という点で倫理的には問題があります。
ただ、今の中国では倫理的に問題があると思われる行動でも、
法律に違反してさえいなければ
それは「最も賢い」と評価されるのです。

今回は渋滞に対する対処方法によって、
中国の人たちの行動をリスク・リターン・マトリックスで
4種類に分類しましたが、
これはビジネスの世界でも同じです。

競合する中国企業の行動はマトリックスのどこに属するのか、
そして、自分はマトリックスのどこで戦っているのか。
良い悪いは別にして、中国ビジネスにおいては、
これらを常に意識することにより、
更に適切な次の一手が
打てるようになるのではないでしょうか。


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2009年6月3日(水)

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