第1022回
「私を買ってください」
1億人近くの人が登録する
中国の巨大インターネットオークションサイト
「淘宝網(たおばおわん)」。
最近、このオークションサイトに
自分の持ち物ではなくて、
自分自身を出品する人が出てきています。
先月、北京の北方工業大学を
2005年に卒業した数学科クラスの15人が、
「淘宝網」に「我がクラス」という店を開設、
各人の履歴書とともに
月給2000-3000元(29,000-43,500円)の落札希望価格で
自分たちを出品しました。
「淘宝網」は当初、
「個人のプライバシーが含まれる商品の出品は、
法律に触れる可能性がある」ということで
この店を強制的に閉鎖しましたが、
「就職難で困っている学生が、
窮余の一策としてやっているんだから大目に見てやれ!」
という抗議の電話が殺到、同社は社内で検討の結果、
就職先を探している人が自分を出品することを
条件付きで認めました。
今から4年も前に卒業していること、そして更に、
数学科といういかにもつぶしが利かなそうなクラスの人たちが
15人も揃いも揃って就職できていないことが、
人々の同情を誘ったのではないか、
と私は勝手に分析しています。
また、「淘宝網」で
「私の残りの人生を売ります」という店を開設したのは、
北京出身の25歳の美女・陳蕭(ちぇんしゃお)さん。
お店は「人の時間は売ったり買ったりできる。
陳蕭の生活をどうするかはお客様の権利です。
そしてお客様へのサービスは私の義務」
というちょっと妖しいフレーズで始まります。
彼女はかつてはアパレル関係の仕事をしていましたが、
「生きていても本当につまらない」と思うようになり、
「淘宝網」で残りの人生を売ることを思いついたのだそうです。
彼女の残りの人生の料金は8分8元(116円)、
1時間20元(290円)、1日100元(1,450円)。
但し、違法なことはしないとのこと。
これまでにコーヒーの宅配から
汽車の切符手配まで何でもこなし、
既に数百人が彼女の残りの人生を
買ってくれたのだそうです。
「私を買ってください」。
こう言ってインターネットオークションサイトに
電化製品や洋服と一緒に自分自身を出品するということは、
一歩間違えば人間の尊厳を損ないかねない、
倫理的に問題のある行為のように見えます。
しかし、良く考えてみれば、
サラリーマンだって自分の時間や使用権を会社に売って
おカネをもらっているという点では彼らと同じです。
中国の人たちの
インターネットオークションサイトへの「自分出品」は、
仕事とは、時間とは、人間の尊厳とは、
そして人の人生とは何なのか、ということを、
改めて考えさせてくれます。
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