第1014回
イタリアのパスタと中国の麺
北京の人たちは
フランス料理はあまり好きではありませんが、
イタリア料理はみんな大好きです。
北京のイタリア料理店は三全公寓のイル・ミリオーネを始め、
どこも中国人のお客さんがたくさん入っており、
2号店、3号店を出しているお店もあります。
フランス料理とイタリア料理の差はどこにあるのか?
それは、イタリア料理にはスパゲッティ、ピザなど
いわゆる主食系の料理が多く、フランス料理と違って
お腹いっぱいになりやすいからなのではないかと思います。
特に北京を始めとする中国北部の人たちは、
小麦を練って作った麺や
饅頭(まんとう、中国式蒸しパン)が大好きです。
その辺も北京でイタリア料理が
大人気となっている理由の一つなのではないでしょうか。
私、以前から不思議に思っていたのですが、
イタリアのパスタと中国の麺には
似ているところがたくさんあります。
イタリアのパスタの種類の多さは世界的にも有名ですが、
中国の麺にもたくさんの種類があります。
中国の麺の故郷・山西省に行くと、
様々な麺を食べることができます。
練った小麦の生地を刀で削って鍋に入れる
「刀削面(だおしゃおみぃえん)」、
生地から長い長い1本の麺を引っ張り出して
どんどん鍋に入れていく
「一根面(いーげんみぃえん)」、
生地をお箸ではじいて鍋に入れていく
「剔尖面(てぃーじぇんみぃえん)」などなど。
更に、イタリアの「ラビオリ」は
肉や野菜を小麦の皮で包むという発想が
中国の「餃子(じゃおず)」と同じですし、
イタリア語で「小さな耳たぶ」を意味する
「オレキエッテ」というショートパスタは、
中国語で「猫の耳」を意味する
「猫耳朶(まおあーるどお)」という麺と
同じ形をしています。
パスタと麺のこの類似は
両国が古代からシルクロードで
つながれていたことで伝わったのか、
はたまた両国で独自に発展したものが
偶然似ているだけなのかわかりませんが、
イタリアも中国北部も雨が少なく土地が痩せていたため、、
乾燥に強い小麦ぐらいしか育てられなかった、
というのは事実であると思います。
しかし、そんな小麦ぐらいしか採れない
限られた条件の中で、
「様々な形のパスタや麺を作って、
楽しみながらお腹いっぱい食べたい」
という「食」に対する並々ならぬ情熱は、
イタリア人にも中国人にも
共通するものなのではないでしょうか。
北京でイタリア料理が流行るのは、
そんなイタリア人の「食」に対する情熱に、
北京の人たちが無意識のうちに
共感しているためなのかもしれません。
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