第997回
「銭−素質マトリックス」

「他有銭是有銭、但是没素質
(たようちぇんしーようちぇん、だんしめいすーじ)」。
最近、中国でもこういうセリフを聞くことが
多くなってきました。

日本語に訳すと
「彼は金持ちは金持ちだが、言動に品格がない」
といったような意味です。
素質(すーじ)は日本語の素質(そしつ)とは意味が異なり、
品格や行儀の良さを表します。
数年前までの中国では
何しろカネをたくさん持っている人がエラかったのですが、
最近は素質を重視する人が増えてきているように思います。

こう考えていくと、縦軸をおカネのあるなし、
横軸を素質のあるなしとした
「銭−素質マトリックス」というものを作ることができ、
現代の中国人はこのマトリックスの4つの象限の
どれかに振り分けることが可能であるように思います。

まず最も尊敬されるのは、
右上、第1象限のカネもあるし素質もある人です。
金持ちで品格のある人はみんなから好かれますが、
金持ちのほとんどが成金である旧社会主義国家・中国では、
こうした人種は非常に少ないのが現状です。

逆に最も嫌われるのが、
左上、第2象限のカネはあるが素質のない人です。
いわゆる成金と言われる人たちで、
世の中カネで買えないものはないし、
カネさえ払えば何をやっても許される、
と考えている節があります。

右下、第4象限のカネはないが素質のある人は、
大学教授や汚職に手を染めていない共産党幹部に多いです。
彼らはとても上品で、
こうした人たちとお付き合いをすれば、
多くの日本人の中国人観が
根底から覆されるのではないかと思います。

そして、左下の第3象限はカネも素質もない人です。
今の中国では圧倒的多数の人たちがこの象限に属します。

以前の中国ではカネのあるなしが
人間の価値を測る唯一の尺度であるようでしたが、
「銭−素質マトリックス」という考え方が
できるようになったということは、
中国の人たちの価値観が多様化し始めていることの
表れなのではないかと思います。

中国の人たちが金儲けだけではなく、
素質以外にも更にたくさんの
人生における価値の尺度を見出し、
より個性的でより豊かな人生を
歩む人が増えれば良いな、と思います。


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2009年3月2日(月)

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