第976
不信社会でも普及するデビットカード

私が中国に来た12年前、
首都・北京でもクレジットカードを使えるところは
高級ホテル、高級レストランなどに限られていました。

日本から来るお客さんを接待する必要があった当時の私は、
なくしたり盗られたりしたらどうしよう、と思いつつも、
仕方なくいつも多額の現金を持ち歩いていたのですが、
「不信社会・中国ではクレジットカードは絶対に普及しない」
と思っていましたので半ば諦めていました。

この状況に終止符を打ったのが
2002年のデビットカード・銀聯カードの登場です。
デビットカードはクレジットカードと違って
与信機能がありませんので、
カード使用者は自分の預金残高を超える買物はできません。
カード会社側の貸し倒れリスクがない銀聯カードは急速に普及し、
たった6年で中国の総人口をはるかに超える
16億枚が発行されました。

これに対しクレジットカードは予想通りあまり普及せず、
世界最大のクレジットカード会社・VISAでも、
中国での発行枚数は1500万枚前後と、
銀聯カードとはケタが2つ違うような状況です。

「不信社会・中国ではクレジットカードは絶対に普及しない」
という12年前の私の予想はある意味的中しましたが、
現在のようにデビットカードが普及して、
多額の現金を持ち歩かなくて済む便利な世の中になるとは
夢にも思いませんでした。

更に、デビットカードなら普及しても、
日本やアメリカのように
クレジットカードを預金残高以上に使って
自己破産する人なども出ませんので、
社会の安定も確保されます。
うまいことを考えたものです。

ただ、北京オリンピックで
中国に来る外国人が増えることを狙ってか、
ここ数年、クレジットカード、
特に「歓迎使用VISAカード」のマークを
店頭に掲げているお店が飛躍的に増えました。
中国国内の銀聯カードの加盟店が70万店強であるのに対し、
VISAカードの加盟店は20万店に達しているとのことですので、
VISAカードは発行枚数では銀聯カードに完敗ですが、
加盟店数では大健闘していると言えるのではないでしょうか。

発行枚数は銀聯の1/100にも関わらず、
加盟店数は1/3弱というこの数字は、
加盟店のターゲットが中国人ではなく
外国人であることを示しています。
中国ではいかに中国人富裕層を常連客として取り込むかが、
小売業や飲食業の成功のポイントになりつつありますが、
クレジットカードを使い慣れた
外国人の消費を期待しているお店も
まだまだたくさんあるのです。


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2009年1月12日(月)

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