第960回
末端まで伝わらない共産党中央の危機意識

先日、中国の胡錦涛国家主席は共産党政治局の会合で、
中国の競争力と貿易面での強靭さが、
世界的な景気低迷によって脅かされており、
共産党の統制力が試されているという認識を示しました。

胡主席は「世界の経済成長率が明確に減速する中、
今後一定期間にわたり、
国際的な金融危機や圧力の深刻化が持続し、
われわれはこの影響に直面するだろう」と指摘。
景気減速を背景に「明らかに需要が抑制されており、
中国の競争面での優位性を着実に弱める圧力が生じている」
との見解を表明しました。

そして、胡主席は
「今回の圧力を勢いに転じ、課題を機会に変え、
着実かつ比較的ペースの速い経済発展を維持できるかどうかで、
共産党の統制能力が試される」とも述べています。

こうした国家主席のコメントから、
中国共産党中央がいかに今回の景気減速に
危機感を抱いているかがひしひしと伝わってきます。

その一方で、全く危機意識のない共産党員も
まだまだたくさんいます。

胡錦涛国家主席の上記のコメントと同日に、
雲南省永善県で娘の結婚を祝うため
4000人以上の招待客を招いて盛大な披露宴を開いた
県の警察幹部が紀律違反で解任された、
というニュースが飛び込んできました。

永善県は国家から貧困県に指定されているそうですが、
同警察幹部はこの披露宴で500卓ものテーブルを用意、
披露宴は平日の早朝から翌日の夜まで続いたのだそうです。
このあまりに派手な披露宴がインターネット上で議論を呼び、
それが共産党中央や国務院の耳に入り、
今回、党の紀律検査部門が解任処分を決めたのだそうです。

貧困県で、それも中国という国が
大きな危機に直面しようとしているこのご時世に
そんなことをすればどういう結果を引き起こすかは
ちょっと考えればわかること。
それでもこんな危機意識を全く感じさせない行為ができるのは、
根本的な認識や考え方がずれているとしか言えません。

景気の減速よりも何よりも、
共産党中央の危機意識が末端の共産党員まで伝わらないことが、
中国という国にとっての最大の危機なのかもしれません。


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2008年12月8日(月)

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