第949回
中国政府の緊急経済対策

世界的な金融危機により、輸出だけではなく、
経済成長を支える頼みの綱である
投資や消費などの内需にも
かげりが出てきている状況の中、
中国政府はこれ以上の景気の減速を食い止めるために、
財政、税制、金融のあらゆる策を講じて
内需拡大に全力を挙げる方針を打ち出しています。

財政の面では先日、鉄道部が全国の鉄道建設のために
合計2兆元(28.5兆円)を投資することを決定しました。
この2兆元は既に着工済みの案件も含むようですが、
プロジェクトが追加され、実際の投資総額が
これより大きくなる可能性もあるとのことです。
また、中国政府は
生活保護世帯、退職者、苦学生、四川大地震被災者などの
社会的弱者に対する補助金を拡充しました。
これに伴う財政支出は
合計約400億元(6000億円)に上るそうです。

税制の面では不動産市場のてこ入れのため、
11月1日から不動産譲渡税の引き下げ、
不動産売買印紙税、土地付加価値税の免除が
実施されました。

金融の面では中国の中央銀行である中国人民銀行が、
9月16日に6年7ヶ月ぶりの利下げを行った後、
既に合計3回の利下げを実施しました。
また、不動産購入促進のため
住宅ローン金利の下限を引き下げたり、
最低頭金比率を20%に引き下げたりしました。

そして3日前、11月9日には
2010年末までの2年間で
4兆元(57兆円)の公共投資をすることと、
銀行の融資規模制限を撤廃することを含む、
景気刺激策が発表されました。

いつもながら中国政府の迅速な対応には感心します。
金融安定化法案が下院で否決されて
すったもんだしていたアメリカや、
2兆円の定額給付金の国会での審議が
いまだに始まっていない日本とは大きな違いです。

こうした危機的状況の中では、
いちいち議会を通さなくてはならない民主主義国家よりも、
中国のような独裁国家の方が
機動的に政策を繰り出すことができて、
結果的に被害を最小限に
食い止めることができるのかもしれません。


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2008年11月12日(水)

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