第896回
中国製造業の未来

人件費の高騰、新労働契約法の施行、
人民元高、環境規制の強化などにより、
「世界の工場」としての役割を終えた中国。

中国の製造業はこのままダメになってしまうのでしょうか。

私はそうは思いません。
今後、中国の製造業は、海外への輸出ではなく、
どんどん大きくなりつつある
中国国内のマーケットにターゲットを変更し、
益々発展していくのではないかと思います。

但し、中国製造業が発展していくには、
「安くて豊富な労働力を利用した人海戦術で
付加価値の低い製品を作る」という
今までのビジネスモデルを根本から変える必要があります。

1つは工程のオートメーション化です。

中国の工場にはやたらと人がいます。
縫製工場などに行くと、
体育館のような広い建物の中で、
何百人もの女工のみなさんが
一心不乱にミシンの操作をしています。
その様子は、中学生の時に歴史の教科書で見た
富岡製糸場のようです。

近隣の農村や内陸部から安い労働力が
いくらでも調達できた時代は、
設備投資がかからないこうしたやり方の方が
コストが低かったのですが、
毎年10%以上のペースで人件費が上がっていく
現在の状況が続くのであれば、
初期投資額は大きくても工程をオートメーション化して、
最小限の人数で生産ができるようにしないと、
生産コストが上がり続けてしまいます。

もう1つは付加価値の高い製品を作ることです。

いくらターゲットを海外から国内のマーケットに変更しても、
回避できるのは人民元高の影響だけであり、
その他のコスト上昇分は
企業が吸収していかなければなりません。
そうなると、付加価値が低く利益が薄い製品は
すぐにコスト割れしてしまいます。

今後の中国は「強い」人民元を利用して、
低付加価値の製品を
中国より生産コストの低い国から輸入すると同時に、
中国国内の製造業を高付加価値化する必要があります。

こうして見ていくと、中国製造業の未来は
日本の製造業が通ってきた道と
同じ道を歩むことが予想されます。

付加価値の高い製品を
工程のオートメーション化によって、
いかに低いコストで作るか。

今後中国では、日本の製造業が
今まで培ってきたノウハウの価値が、
益々高まっていくのではないかと私は思います。


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2008年7月11日(金)

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