第895回
ポスト「世界の工場」時代の選択肢

既に「世界の工場」ではなくなった中国。

「安価な労働力による人海戦術で作った
コストの安い製品を世界中に輸出する」
というビジネススキームは、
人件費の上昇により付加価値の低い製品から
成り立たなくなりつつあります。

「世界の工場」時代の中心地、
広州から深セン、珠海にかけての
珠江デルタ地域を擁する広東省は、
法定最低賃金を2006年9月に17.8%、
今年4月には更に12.9%引き上げました。
これにより最も高い広州市の最低賃金は
月880元(13200円)となりました。

しかし、この最低賃金で雇えるのは清掃作業員ぐらいで、
例えば、縫製工場で働くミシン作業員ならば、
最低でも月1500-1600元(22500-24000円)ぐらいは
出さないと雇えないそうです。

この人件費の上昇の他に、
今年1月の新労働契約法の施行、人民元高、
環境規制の強化、外資優遇政策の廃止など様々な要因により、
珠江デルタの主役である
香港企業の生産コストは急激に上昇、
珠江デルタに進出している香港企業6万社の内、
半分の3万社が既に撤退を決めているそうです。

珠江デルタから撤退する香港企業の選択肢は3つ。

1つ目は人件費がまだ沿海部ほど高騰していない
中国内陸部に工場を移転すること。
しかし、工場を内陸部に移転しても
人民元高の影響は避けられませんし、
内陸部でも人件費が高騰するのは時間の問題です。

2つ目はベトナムなど中国より人件費が安い
東南アジア諸国に工場を移転すること。
これならば、中国の内陸部よりも
人件費高騰のペースは遅いでしょうし、
人民元高の影響も受けません。

そして、3つ目は廃業。
中国には背中を追い風で押されるような
ビジネスチャンスが他にたくさんあるのですから、
この際、低付加価値の製造業からは足を洗って、
もっと楽しくて儲かるビジネスに転業するのが、
一番賢い選択なのかもしれません。


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2008年7月9日(水)

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