| 第869回中国は既に「世界の工場」ではない!
 先日、中国綿紡績業協会が国内17省の綿紡績企業を対象に行った調査によれば、
 約半分、49.2%の企業が
 生産中止や業種転換を希望しているのだそうです。
 理由は、人民元為替レートの上昇加速、原料及び労働力コストの上昇、
 輸出増値税還付率引き下げなどにより、
 採算が極端に悪化しているためです。
 労働集約型で付加価値の低い製品を作る輸出型産業が、
 中国では成り立たなくなりつつあることがわかります。
 中国は既に「世界の工場」ではないのです。
 日本でも明治維新以降戦後まで、紡績業は近代産業の重要な担い手であり、
 紡績会社は日本企業の売上高ランキングで
 常に上位に位置していました。
 それが、第一次石油ショック後、
 円高や中国を始めとする生産コストの安い国の参入により
 競争力を失った日本の紡績業は急速に衰退し、
 今では、「紡績」は会社名として残ってはいるものの、
 日本で綿の紡績をする会社はほとんどなくなってしまいました。
 そして、今度は日本の紡績業を衰退させる一因となったその中国で、
 紡績業が成り立たなくなりつつあるのです。
 中国政府は現在、「輸出主導」から「内需主導」へ、「低付加価値」から「高付加価値」へ、
 国内産業の大転換を行っています。
 あまりに急激な転換を行うと、
 たくさんの会社が一気に倒産し、
 大量の失業者が巷にあふれ、
 国内が大混乱に陥る可能性がありますので、
 ゆっくりとゆっくりと転換を行っています。
 そんな中で「輸出産業」、「低付加価値産業」の代表格とも言える紡績業で、
 経営が立ち行かなくなる企業が続出しているのは、
 その大転換政策の効果が現れ始めている、ということです。
 今や中国のユダヤ人と呼ばれるまでになった温州商人も、元々は繊維と皮革を加工する町工場からスタートしています。
 しかし、彼らは繊維と皮革の加工で財を成すと、
 さっさと加工業を卒業、
 その資金を北京・上海の不動産や山西省の炭鉱に投資し、
 更に大きな財を築きました。
 そうした人たちと比べると、いまだに紡績業をやって困っている会社は、
 いかにも腰が重く、時代の流れも読めていない、
 と言わざるをえません。
 中国政府の産業政策の方向性は非常に明確であり、
 時間的な余裕も十分にあった、にも関わらずです。
 繊維業界からさっさと足を洗って隆盛を極める温州商人と、いまだに紡績業をやって困っている人たち。
 この二者を見比べると、やはり、自分の仕事が時代の流れに合っていないな、
 と思ったら、その中でジタバタするのではなく、
 次の仕事を始めるカネがあるうちに
 さっさと商売替えをしてしまった方が良い、
 ということがよくわかります。
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