第868回
食の安全はカネで買え!

「中国産毒入りギョーザ事件」で日本中が大騒ぎになったとき、
私は日本に住んでいる友人から
「柳田、おまえ毎日中国の食べ物食べてて大丈夫か?」
というメールをもらいました。
まるで、中国の食べ物には全部毒が入っている、
というような言い様です。

確かに、中国には危ない食べ物が
日本よりはるかにたくさんあります。
それは、後に北京テレビのやらせであったことが判明した
「ダンボール入り肉まん事件」が報道された時、
ほとんどの人が「ありそうなことだ」と
さして驚かなかったことからもわかります。

「毒入り」、「ダンボール入り」とまではいかなくても、
自由市場の肉屋につるしてある肉に
ハエがたくさんたかっていたり、
大衆レストランでトイレに行く時に
ちらりと見えた厨房がゴミ捨て場のように汚かったり、
という衛生的にかなり危険な光景は
北京の街のそこここで見ることができます。

しかし、当たり前のことですが、
中国でも全ての食べ物が危険なわけではありません。
中国の人たちは、危険な食べ物に
当たってしまう可能性を極力減らすために、
自分の経済力の範囲内で
「安全をカネで買う」という行為を日常的にしています。

まず、レストラン。
食事をするレストランは予算が許す限り
なるべく高級なところに行きます。
なぜなら、値段の高いレストランならば、
無理をして安くて危険な食材を仕入れる可能性も低いですし、
衛生を保つための諸対策にも予算を割くことができるからです。

また、どうしても値段が安いレストランに
行かなければならない場合は、
なるべくお客がたくさん入っている店に行きます。
これは、流行っている店は食材の回転が速く、
腐ったものを食べさせられる可能性が低い、
という理由です。

そして、家で料理をする場合。
肉や野菜はなるべくイトーヨーカ堂やカルフールなど
信頼できる外資系大手スーパーで買います。
値段的には北京近郊の農民が
自分の家の畑で採れた野菜などを持ってきて売る
自由市場の方が安いのですが、
その農民が農薬をたっぷりと使って
作物を育てている可能性は否定できません。
その点、外資系の大手スーパーならば、
プロのバイヤーが「目利き」の役割をしてくれますので、
危険な食べ物が陳列棚に並ぶ可能性は非常に低いと言えます。

中国では都市部の最富裕地区と農村部の最貧地区を比べると、
平均寿命が20年も違うと言われています。
もちろん、きちんとした医療が
受けられるかどうかの差が大きいのですが、
金持ちは安全な食べ物を食べ続けて長生きし、
貧乏人は危険な食べ物を食べ続けて早死にする、
という要素もあるのではないかと思います。

中国では食の安全を買うカネを持っていない貧乏人は、
金持ちより早死にする運命にあるのです。


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2008年5月7日(水)

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