第797回
中国経済という名の暴れ馬

年間5%前後の元高誘導、輸出税還付の廃止など、
中国政府は輸出を抑制するべく
様々な政策を打ち出していますが、
その努力もむなしく中国の輸出は増加を続け、
今年9月末時点での外貨準備高は1兆4,336億米ドルと、
日本の1.5倍以上の水準まで膨れ上がってしまいました。

中国では「輸出で受け取った外貨は全て国庫に納め、
輸出企業は輸出代金を全額人民元で受け取る」という、
国家が外貨を集中的に管理する制度が採られていますので、
輸出の増加は、市中に出回る人民元の増加に
ストレートな影響を及ぼします。

これが中国国内でインフレを引き起こし、
今年9月の消費者物価指数の伸び率は前年比6.2%、
食品に関しては16.9%、
食肉に絞れば43.0%の大幅な上昇となっており、
一般庶民の生活を圧迫しています。

これ以上の物価上昇が続けば、
生活が苦しくなった一般庶民が
反政府暴動を起こす可能性もなきにしもあらずですので、
中国政府はインフレを沈静化するべく、
今年に入って5回の利上げ、
9回の預金準備率引き上げで、
市中の人民元を吸い上げようとしていますが、
通貨供給量はなかなか減らず、
今年9月末時点の通貨供給量(M2)は
39兆3,100億元(約629兆円)と、
1年前と比べて20%弱も増加してしまいました。

中国国内であふれかえっている人民元は
海外に出ることができませんので、
国内の不動産や株式市場に大量に流れ込み、
相場を高騰させています。
こうした市場の過熱を抑えるために、
中国政府は様々な投資抑制政策を打ち出していますが
その効果はあったとしても一時的で、いまのところ
相場上昇の勢いが衰える気配はありません。

中国経済の現状をまとめるとこんな感じでしょうか。

普通の国は輸出を増やして外貨準備高を積み増したり、
投資を促進して景気を浮揚させたりするのに
たいへんな苦労をしているのですが、
中国は逆に、暴れ馬のような経済の勢いを
落ち着かせるのに頭を悩ませています。

この悩み、ぜいたくと言えばぜいたくですが、
手綱の引き方を一つ間違えれば、
馬自体が死んでしまう、という可能性もありますので、
中国政府も必死です。

中国政府は中国経済という名の暴れ馬を
殺さずに落ち着かせる、という
難しい手綱さばきを迫られているのです。


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2007年11月26日(月)

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