第786回
オーナー社長と雇われ社長の違い

私が大学を卒業したのは1989年、
バブル経済真っ盛りのときでした。

そのころの私は世の中の仕組みが全くわかっておらず、
なぜ大企業の社長より、中小企業の社長の方が
羽振りが良いのかがわかりませんでした。

このため、卒業後の進路を決めるときにも、
世の中の常識に従い、
何のためらいもなく大企業の面接を受け、
大企業の中で課長、部長と昇進していき、
最終目標は社長、というキャリアパスを選びました。

しかし、働き始めてすぐに、
丸紅のような大きな会社で社長になるのは
針の穴にラクダを通すより難しい、
ということがわかりました。

仕事をする能力が抜群であることは大前提ですが、
その上で信じられないような幸運に
何度も見舞われることがなければ、
とてもではないですが何千人も従業員がいる会社で
社長になることはできません。

ただ、何十年もがんばって働いて、
天文学的確率の幸運で丸紅の社長になれたとしても、
どうもその年収が1億円を超えることはないようだ、
ということもわかってきました。

その辺の中小企業の社長でも、
事業がちょっとうまくいけば、
年収が1億円を超えるのは
それほど難しいことではないと思います。
なのに、売上高数兆円を誇る超大手企業の社長の年収が
1億円に届かない、というのはどういうことか。

そこでようやく私は
オーナー社長と雇われ社長の違いに気付きました。
オーナー社長は会社に投資していますので、
事業がうまくいって会社が儲かれば
その分社長の収入も上がりますが、
雇われ社長はいくら稼いでも、
その人が会社に提供した労働力に見合う以上の
報酬が支払われることはないのです。

この辺のことは、中国の人たちは
学生のころから常識として知っているようです。
このため、最近は随分変わってきたとはいえ、
日本ではいまだに大企業に就職して、
その中で昇進していく、
というキャリアパスを選ぶ人が多いのに対し、
中国ではキャリアパスの最終目標を
独立起業して老板(らおばん、オーナー社長)に
なることに置く人が多いのです。

「大企業の社長になるのは非常に難しいが、
老板になって大企業の社長と同等の収入を得るのは
それほど難しいことではない」ということは
中国では誰もが知っている常識なのです。


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2007年10月31日(水)

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