第783回
上海に移り住む台湾人
北京には韓国人が12万人いると言われていますが、
上海には台湾人が50万人いると言われています。
これも、上海に住む日本人の約10倍の数です。
台湾人は元々が中国人ですし、
言葉の問題もありませんので、
韓国人や私たち日本人に比べれば、
中国に移り住むに当たっての障害は少ないとは思われます。
しかし、それでも政治体制や
社会の仕組みが違う地域に行くわけですから、
東京の人が大阪に移り住むのとは
わけが違うのではないでしょうか。
これだけたくさんの台湾人が中国本土に移り住んでくるのは、
台湾企業が続々と中国に出てきているからです。
アメリカで電子工学を学んだ留学組が起業してくれたおかげで、
台湾は一時は「シリコンアイランド」と呼ばれるほど、
ハイテク産業が発達しましたが、
経済のグローバル化により、
台湾企業がより生産コストの安い中国本土に
工場を移転し始めたため、台湾経済は空洞化しました。
このため、台湾で仕事がなくなった人たちが、
職を求めて大量に中国本土に移り住んでくるようになったのです。
以前の中国には「台湾人」イコール
「金持ち老板(らおばん、オーナー社長)」というイメージがあり、
実際、彼らは北京で最も羽振りの良い人種でした。
私もそういうイメージを持っていたため、
先日、私の会社に面接に来た日本人女性が
「うちの主人は台湾人で、
中国人が経営している工場で働いているのですが、
主人の稼ぎだけでは生活できないので、
私も働きに出ることにしました」
と話すのを聞いて非常に驚きました。
「台湾人が中国人の下で働く」という姿が、
にわかにはイメージできなかったのです。
中国に移り住んできた台湾人は
既に100万人を超えていると言われています。
人口1億3,000万人の日本からは
日本人が10万人しか中国に来ていないのに対し、
人口2,000万人強の台湾からは
台湾人が100万人以上中国に来ている、
ということを考えると、
台湾がいかに空洞化しているかがわかります。
政治的には統一を頑なに拒み続ける台湾ですが、
経済的には既に半ば中国に飲み込まれてしまっています。
今後、台湾企業の中国進出が更に進み、
台湾から中国本土への人口流出が続けば、
台湾経済は更に空洞化が進み、
政治的にも弱体化することは明白です。
そういった意味で、
中国政府の台湾企業、台湾人優遇政策は、
台湾統一に向けて、人民解放軍の
どんな最新兵器よりも強力な武器になるのです。
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