第693回
中国のハイテク国家化が日本の頭脳労働者に迫る選択

今年の全人代の経済関係の法案で注目されたのは、
企業所得税法案と物権法案です。

まず、企業所得税法案は
第663回 中国企業所得税改正法案、でもお話しした通り、
外資企業、中国企業に関わらず、
企業所得税率を25%に統一する、というものです。

この法案の成立により、
今まで15%の優遇税率を享受してきた
製造業の外資企業にとっては、
5年間の猶予期間はあるものの、
10ポイントもの大幅増税となります。

その一方で、今まで33%の企業所得税を支払ってきた
中国企業やサービス業の外資企業にとっては、
8ポイント、日本円で2兆円規模の大幅減税となります。
この減税により、
中国企業の競争力がさらに増すとともに、
サービス業の外資企業の中国進出が
加速することが予想されます。

また、基準ははっきりしていないものの、
ハイテク企業の企業所得税率は15%と
非常に低く抑えられることになりました。
これは、中国が
「人海戦術を使った低付加価値生産基地国家」から、
「世界の頭脳を集めた高付加価値ハイテク国家」に
脱皮しようとしていることを示しています。

今まで日本企業は「高付加価値の頭脳労働は日本で、
低付加価値の肉体労働は中国で」というような
分業体制を採ってきました。
これにより、日本人の肉体労働者は、
中国人に職を奪われ、大変な目に遭ってきました。

しかし今後、中国がハイテク国家化し、
「中国でも高付加価値の頭脳労働ができる」
ということになってしまうと、
日本の頭脳労働者の人たちも
うかうかしてはいられなく
なってくるのではないでしょうか。

実際、最近は、日本の本社機能を中国に移すという
BPO(Business Process Outsourcing)の採用を検討する
日本企業が増えている、と聞きます。
今後、中国がハイテク国家化すれば、
研究拠点を日本から中国に移す、
なんてこともありえます。

中国のハイテク国家化は、
1,000円のお昼ご飯を食べている日本の頭脳労働者に、
100円のお昼ご飯を食べている中国の頭脳労働者の
10倍の付加価値を生み出すか、
中国の頭脳労働者と同じ100円のお昼ご飯を食べるか、
どちらを選ぶかの選択を迫ることになるのです。


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2007年3月28日(水)

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